昇る魚 (ページ5)

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「...俺の大好きな先輩、宮田くんみたいに大丈夫かな？」

なんでも赤裸々に話してくれる宮田くんにしては珍しいくらい話してくれないけど、そういえば宮田くんも昔似たような事があったって噂であった事が頭に過ぎる。

ずっと隣にいた親友が遠くへ行ってしまったと感じてしまった事。宮田くんは言うまでもなくその良すぎる人の良さで妬んだりギクシャクする事はなく完全にサポートに徹してて、相手も宮田くんの良すぎる人の良さを当然の如く感じ取っていたから見捨てる事なくそのサポートを受け入れてたし関係性はなくならずに済んだ。

阿部ちゃんは果たして差し出す俺の手を取ってくれるのだろうか。

舘様はその問いには答えてくれずただただ黙っていた。

『佐久間とは今壁を作ってる』

かつて雑誌で言われた阿部ちゃんの言葉が今も脳裏に焼き付いている。
あらゆる人と人との関係というものは、ずっと同じように長く続くことは当たり前の事だがとてもとても難しい事なのかもしれない。

佐久間が笑って阿部ちゃんが笑う。
阿部ちゃんが笑って佐久間が笑う。

お互い呼応し合うかのように笑い続けていた煌めくあの日々達を。
とある昔のなんてことのない日のあたたかくひだまりのような思い出達を氷のように固めて、ガリガリ噛み砕いて飲み込んで、いっそのこと全部自分の血肉になればいいのにとぼんやり恨んだ。

昇る魚
(ずっと隣で泳げていけたらよかったのに)

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さっくんの悲しみというよりは筆者の心の叫びの代弁に近い()

全3〜4話予定。
あとがきで考察を書いていくかもしれません。