昇る魚 (ページ24)

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まだ日が落ちていない時間のスタジオ間の移動で、送迎車から見える景色が明るいとなんだか落ち着かない。

目黒を乗せている車の後続に自分が乗っている車をつけてもらって目黒と一緒に移動した。

久しぶりの9人の仕事をするダンススタジオに到着するとすぐ着替えて目黒と一緒に9人が待つ練習部屋に入ろうと後ろに目黒を控えさせ、自分がガチャッとドアを開けると

「あべちゃんおはよっっっっっっっ」

ドアを開けた瞬間佐久間が明るくにこやかに、後ろで桜を咲かせてるんじゃないかというくらいに華やかに笑い、抱きついてきた。

いきなり飛び出してきた佐久間を受け止めて少しバランスを崩す。

抱きついて俺の胸元に顔をひとしきり埋めた後、胸元から顔を離してしっかりと目と目が合うように佐久間がこちらを見る。

明るく爽やかなそして－－－－強い、佐久間の笑顔。

「...おはよ、佐久間」
「あべちゃん！！！！」

きゅるんとした上目遣いで、だけれども照が以前指摘した彼の癖で見下ろされているように見えるその仕草でいつも笑ってしまいそうになる。

「めめとのサイダーのCMお疲れ様！！！来年もまたできるといいね！！！」

そう佐久間は何か吹っ切れたかのような、表情で純粋にニッコリ笑いかけてくれた。

その笑顔に対してつい圧倒されてしまい

「、うん」

とたいした返しが相変わらずできずそうかと思えば佐久間は

「照ー！！あのテイクもう一度やろーぜー！！」

とぴょんぴょんとどこか行ってしまい、まるで台風のように一瞬で場を荒らし去ってしまった。

いつものことなんだけど言われてみれば約一週間ぶりの佐久間に珍しくまだ体が追いついていないようだ。