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「今日この後久しぶりにメンバー全員と仕事だね」


目黒がサイダーを飲みながらそう続けて一気に現実に引き戻される。


そうだ、今日はCM撮影がやっと終わりこの後は延期になっていたとあるテレビ局の音楽祭のパフォーマンスを全員でやっと初めて合わす日だったんだと思い出す。



「なんだかんだみんなのソロ仕事とかオフが重なっちゃってみんなで合わすのが遅くなっちゃったよね」
「…あべちゃん、大丈夫??」
「へ???」

そう目黒が脈絡なく心配して、手を伸ばし俺のほっぺを軽く撫でた。



突然の事でなんだかよくわからなくてしばらく硬直してしまった。


一方でこれは全目黒担が憧れるシチュエーションを今まさに自分はされてるんだなと冷静に分析している自分もいた。


「泣いてるのかと思った」




そう目黒が呟いた次の瞬間、さっきまで俺のほっぺに触れていた手を下げて、まるで幻のように目黒の手が当たっていた頬の感触も消えていく。


ただ目をぱちくりしてると


「ごめん、じゃあまた後で合流しよう」


と言い残して目黒は立ち上がって自身の楽屋に帰っていった。



揺らぐ、揺らぐ、揺らいでいく目黒の後ろ姿。



泣いてるかと思った?

自分が泣く訳ないじゃないか。





目黒の後を追うように自分も立ち上がる。

ふと近くにあったテーブルの上に置かれていたスタンドミラーが目につく。



鏡に映る自分は淡々とその場に応じた表情を適切に作っていてこちらを睨んでいた。



淡々と、ただただ淡々と。




CMの撮影が終わり、豪華な先輩方達と同期のエースがスタジオを去り、目黒も去っていく。




自分も置いていかれないようにスタジオから去っていった。

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作者名: | 作成日時:2021年6月12日 23時

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