昇る魚 (ページ19)

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決してあべちゃんを惹きつけるためではない。

あくまでも自分のために。

あくまでも自分を高めていくその過程の中で、あべちゃんがもう一度自分を魅力的に思ってくれればいいと思うだけで最終目標にしてはいけない。

自分を高めていくことに集中しなければ。
そうでないと惹きつけられるものも惹きつけられない。

宮田くんもかつてそうやってもがき続けた過程の中で出会ったのが自分だったのだろうか、とふと思う。

例えあべちゃんではなくても、努力し続けている限り他の誰かが助けてくれる可能性もあるし、助けてくれる人との新しい出会いがあるかもしれない。

何より努力して成長した自分が未来の自分を助けてくれると思うから－－－

「今帰ってるよーー！ん？家に来て欲しいの？？もう素直じゃないなーー行きますよっと」

さっきまで自分に声が大きいよって注意していたくせに宮田くんの方がむしろ大きい声でテンションが高く、そして誰も聞いた事ないんじゃないかってくらい最大級の甘ったるい声で電話口の相手に話かけている。

これまでにないくらい目を細めて、幸せですって言わんばかりに口元も綻んでるであろうその背中を見て「大丈夫」と思った。

「大丈夫、きっと俺達も大丈夫」

俺達の関係もきっと、大丈夫。

途中から見て見ぬふりをしていたもやもやとした感情が一気に晴れ渡っていくのを感じた。

さすが宮田くんは偉大だなと改めて思い直し、そうじゃなくてと首を振る。

明日は久しぶりのメンバー全員の仕事－－－－久しぶりにあべちゃんに会える仕事だと思い出す。

宮田くんが去り、あべちゃんが戻ってくる日常が始まる。

宮田くんの嬉しそうな後ろ姿と依然としてこちらを睨んでるかのように煌々と黒光りしてくる「昇」と掲げたお店に背を向けて再び歩き出した。

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第2話ようやく完結です…！
こんなに長くなる予定ではありませんでした笑

さっくん描写は思い入れがあり、まだまだ書き込みたいところもありますが、皆様をお待たせしないように即書き下ろししました。

今後表現を一部改定するかもしれないです。←
その際はまたアナウンスするので見てもらえると嬉しいです。

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読む人が分かれる小説だとは思いますが1人でもこの世界観良いって思ってくださる方がいれば幸いです。