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「宮田くん今日はありがとうございました!!!!!」
お辞儀を直角90度に曲げて宮田くんにハキハキとお礼を言う。
宮田くんは「いいよ、俺が誘ったんだし気にしないで」といつものふにゃふにゃした笑顔で返す。
俺が誘ったんだし、が強調して聞こえたのは気のせいだろうか。
「...ごはんもごちそうさまでした!!!」
先程同様周りに響き渡るかのようなくらいに大きい声で言った。
宮田くんは少しずれた黒いマスクを直しながら
「佐久間声大きすぎるから」
と注意というには優しすぎる声色で笑った。
−−−「これがほんの少し先の未来を歩んだ先輩のお言葉」
宮田くんがそう言ってビールを飲んだ後、彗星の如く突然鳴り響いた携帯電話の着信音がその場の空気を全部掻っ攫ってしまった。
「ちょっとごめんね」
と宮田くんは個室から出ればいいのにその場で電話に出て、手で口を覆いながら話した。
「えー、どうしたの?…うん、うん、もうそろそろ帰ろうとしてたって!」
宮田くんは嬉しそうにしながらうっとうしい感じで電話に出てて、自分でもその表現が矛盾し過ぎて意味不明だと思うがその表現が一番合ってるんだよなとぼんやり頬杖をついて見つめる。
その電話を待っていました!と言わんばかりに(悔しいけど)今日イチ楽しそうに電話で話している。
「帰ろうなんて話微塵も出なかったくせに」
なんて意地悪な愛人のような台詞を心の中で毒づいてみせながらも、宮田くんはそんな自分に気づく訳がなく電話の向こう側の相手にこれまで以上に優しく甘く囁き続ける。
丁度その時「わかった、わかったから〜」と顔を綻ばせながら、まっきいろの財布を取り出した。
一部ファンで話題になったあの財布じゃんって気づくと呆れつつ残ったビールをちびちび飲んだ。
今回の宮田くん独り占め会終わりの合図。
「宮田くん!!!今日は自分のためにお時間を割いてくださり、ありがとうございました!!」
「いえいえ」
そう言い切ると宮田くんはいつも通りの本音がよく見えない笑顔ではなく人を安心させる温かく優しい微笑みで
「じゃあ、またね!元気出してね!!」
と手を振った。
え、俺宮田くんに元気ないとか言ったっけ?
って言おうとしたらもう宮田くんは1人で歩き出していて再び携帯電話を取り出して電話してたから言い返せなかった。
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近日舞台に行くので「Maybe」聞いて(あべさく)モチベ上げてました笑
「Maybe」のモチーフにした小説も書きたい…
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作者名:楓 | 作成日時:2021年6月12日 23時