昇る魚 (ページ2)

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普段は物静かで口数の少ない、人の目をつい惹きつけてしまう天性の独特な上品さを持つ舘様に珍しく声をかけられてはっと我に返る。

今日はめめあべが別の仕事で不在で残りのメンバーはとあるテレビ局の音楽祭に向けて練習専用の某スタジオでダンス練習の日だ。

見渡すと真ん中にぺたんと座り込んで休憩しているのは自分だけでいわふかは相変わらず2人で話し込んでるし、翔太と康二とラウールは雑談して盛り上がっている。どっちにしろ2グループとも四隅のいずれかに寄って和気あいあいとしてる。

ど真ん中であぐらとはいえ1人で座り込んで淡々とサイダーを飲んでいるなんて心配してくれと言わんばっかりな行動じゃないか。そう自分を客観視できない程めめあべのCMが決まるという事実にキていた、という事なのだろうか。

「国王！！！ありがたきお言葉！！！佐久間は通常運転！！！元気でありやんす！！！」
「佐久間、カメラ回ってないしそんなから元気じゃなくていいよ」

心配してる内容とは打って変わってピシャリッと返した舘様のその正反対さに、割と真面目そうな話題なのに不謹慎だけど思わず笑ってしまいそうになる。

かつて俺がアニメヲタクキャラを解禁した時「佐久間は本当にアニメが好きなの？」と舘様が他のメンバーに言ってた時も果たしてこんな雰囲気で言ったのだろうか？と夢想する。

「一週間前から元気なさそうに見えるけどなんかあった？」

ちょうど一週間前。めめあべのCMが決まったとマネージャーからメンバーに伝えられた日だった。舘様の観察力が高すぎるのか、はたまた自分が分かりやすすぎるのか、いやさては両方かと思わず嘲笑したくなる。

真ん中で1人ぺたんと座り込んでいる俺。めめあべのCMが決まったと告げられた日から初めてめめあべのいない仕事をして緊張が解けたのかと察されてもおかしくないほど落ち込んでめめあべのCMのサイダーのボトルを掴んでる俺。ふと周りを見るとふっかと偶然目が合い、そうかと思えば次の瞬間ふっかは照の方に向き直して話を続行していた。