昇る魚 (ページ1)

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(※佐久間side)

めめあべのCMが決まった。

それはとても喜ばしい事ではあった。

プシュッとペットボトルのキャップを開けてサイダーを飲み、プハッと息をついた。ピリリッと喉が痛い。

メンバーが6人から9人に増え、それを皮切りにグループきってのイケメン目黒蓮と頭脳明晰もさながらくっきり二重のお目目ぱっちりな可愛らしいルックスの阿部亮平コンビ、もといめめあべの人気は加速するばかりで２人の仕事もいつかは来るんじゃないかとは思ってた。

一方であくまでファンの中での人気内に留まってるし、対世間である仕事は来ないだろうって冷静ぶって、だけれども本当は必死に縋り付くような思いでいたのは事実だったって気づいたのもめめあべがCM決まったと聞いた時だったから皮肉な事だ(やるせない)

めめあべのCMが決まった。
ついに決まってしまった。

まるで自分が抱えたすべての苦い想いを飲み込むような勢いで右手に持ったサイダーを一気飲みしようとする。

さすがに炭酸の気圧がそれを許してくれなくて上手く飲み込めず、サイダーを飲もうとしてるのに何故か溺れているような変な感覚に陥った。

サイダーじゃなくて自分の複雑な想いに溺れてるような気がして途端に気持ち悪くなってくる。やはり一気飲みできそうにない。

プハッと再びサイダーから口を離してまさにめめあべが起用されたソーダのラベルを見た。

「あべちゃん、CM決まっておめでとう！！」

マネージャーからメンバーに向けてめめあべのCMが決まったと告げられた後、こんな気持ち悟られないように全力で目を細めて全力で笑顔で阿部ちゃんに声を掛けた。

果たしてあの時きちんと明るく正しくあべちゃんに笑いかけてあげられただろうか。

「佐久間、大丈夫？」