【鬼滅の刃】どうかこっちを見て【煉獄杏寿郎】 (ページ27)

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「A！」

「はい。なんでしょう煉獄さん」

仁王立ちで腕を組む彼の威圧感のなんと立派なことか。
悪いことをした記憶は無いけれど、自分の罪を吐き出してしまいそうになるくらいだ。

Aはゴクリと生唾を飲み込む。

恐れや緊張からではなく、煉獄の顔に見とれて。

「ちゃんと聞いているのか？」

「えぇ！一字一句漏らすことなく」

「君は俺のことが好きなのだろう！」

「はい。勿論お慕いしております」

「俺もだ！」

「……？」

にっこりとした表情のままAは首をかしげるので、煉獄は頭に手をやった。

何故ここで伝わらない！

からかわれているのではと疑ってしまいたくなる程、煉獄の常識に当てはまらないAの言動に頭痛がしそうだ。

「俺も君のことが好きだと言っている」

「？？」

何故不思議そうな顔をするのか、煉獄には全くわからない。
彼女のことなら奇声を発して喜びそうなものだが、こうも静かな反応をされるとどうしていいのか困る。静かな反応、というよりもただ伝わっていないだけだろう。

許嫁と結婚することが主流ではあったが、恋愛結婚をする夫婦も少なくない。街に出れば所謂デェトをする男女を見かけるし、この時代にもなれば告白などそう珍しいものでもない。
好きだと言われて好きだと返す。それでもう恋人に発展するはずなのに、Aと煉獄の場合そうはいかなかった。

言ってしまえば、極端にAの片思いの期間が長かったのだ。

最初こそ、本気でお付き合いをしたいと顔を真っ赤にして告白してきた彼女が、いつの間にか開口一番に「好きです」と言うようになった辺りから、彼女は煉獄と自分がどうにかなると言う発想を捨ててしまったのかもしれない。

それは愛されることに不慣れなのにそれでも愛を求める彼女の無意識的な自己防御だったのかもしれない。愛されたいと叫ぶ一方、自分のその欲が叶うはずないと諦めていたからこそのその行動だった。