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Aは腰の刀を抜くと、剣先を煉獄の腹にそっと添えた。
炭治郎達が何をするのか分からず、止める間も無く、彼女は1度息を大きく吸った。
「星の呼吸 捌ノ型 水瓶
っーーーふぅーーーーーー」
剣先が1度光り、まるで桶から水が流れ漏れるかのようにに、ぶわりと大きくその光が広がった。
Aが呼吸するたびに、生きているようにその光の水も鼓動する。
ふぅーーー、ふぅーーーー。
この空間には、Aの規則正しい息遣いと、煉獄の途切れ途切れの荒い呼吸音しか聞こえない。
煉獄の顔を見ていた炭治郎の頬を砂のようなものがさらりと撫でる。
ここに砂場などあるだろうか。
星柱の呼吸の型のせいだろうか。
顔を上げればそれは、Aから漂ってきているようだ。
炭治郎は、疲れでほぼ開かない眼を大きくせざるを得なかった。ぼろりと溢れた涙で歪んだ瞳にもくっきりと映る。
そんな光景だった。
ぼろり、、、Aの右頬が崩れるように捲れていた。
まるで砂の城が風に吹かれて削れるように。
ぴし、、、今度はヒビが入る。
左額から目頭まで、雷のように裂けた模様を描いた。
動揺と緊張で震える指の先。
普段は綺麗に整えられている爪はボロボロに割れ、もう、剥がれ落ちているものもあった。
炭治郎はその光景から目を離そうとして、それでもやはり、Aをじっと見つめたままだった。
善逸も伊之助も、誰も何も言えなかった。
何をしているんだとも、これがどうなるのかとも。
ただ、ただ彼女の呼吸の音を聞くしかできなかった。
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作者名:evoli | 作成日時:2020年1月23日 2時