【QK】すくうまで【伊沢拓司】 (ページ9)

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｢伊沢さん。お会いしたばかりで恐縮ですが、私のこと大切に思ってくださってるんですか？｣
｢え？｣

ひとしきり笑い終えて、失礼しましたと会釈をして彼女が話し出す。

｢女性にハンドクリームを送るのは、手荒れに気がつくほど貴方を気にしています、そこから転じて"貴方を大切に思っています"って意味があるんですよ。なかなか大胆なんですね｣
｢えっ…あ…俺｣
｢冗談ですよ。仕事柄、手は大事なので嬉しいです。ありがとうございます｣

静かに心臓が鳴る。
俺と会ってから、黒羽さんは初めて笑った。
プレゼントの意味を考える余裕すらなかった過去の俺に喝を入れたいが、会話のきっかけになったのでよしとする。

それにしても、黒羽さんはなかなか博識な方なのではないだろうか。
指輪やイヤリングなど有名なものはとにかく、ハンドクリームを贈る意味は俺も知らなかった。

彼女の言う手を使う仕事とはなんだろう。
自然な流れで聞き出すなら今しかない。

｢手が大事、ですか。なんのお仕事をしていらっしゃるんですか？｣