【QK】すくうまで【伊沢拓司】 (ページ4)

今日:6 hit、昨日:4 hit、合計:47,006 hit

3 ページ4

俺も追いかけるようにして改札を抜けて、女性に声をかける。

｢待って、いつかお礼させてください。連絡先交換してもらえませんか｣
｢あー…ほんとにそういうのいいので｣

心底面倒くさそうに頭をかく彼女。
俺だってこれだけ大金を受け取っておいて、はいそうですかというわけにはいかないのだ。

｢時間はお姉さんに合わせるので！なんなら5分間、頂いたお金お返しするだけでも｣
｢…分かりました｣

小さくため息をついた女性は渋々といった感じで携帯を取り出し、トークアプリのQRを俺に見せた。

｢黒羽 Aさん、ですね｣

表示された名前は "黒羽 A"。アイコンはデフォルメされたジト目のカラス。
やっぱりカラスじゃないか、と失礼ながら心の中で笑ってしまう。

｢それじゃ黒羽さん、追って連絡しますね。本当にありがとうございました｣

軽く会釈をすると俺は歩を進めた。こんなに素敵な出会いがあるなら、たまには財布を忘れるのも悪くないかもしれない。