【QK】すくうまで【伊沢拓司】 (ページ20)

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｢あの…伊沢さん｣

遠慮がちにもじもじとしている黒羽さんと目が合う。
首を傾げて続きを促すと、ぽつりぽつりと話し始めた。

｢本当にごめんなさい。活動のこと、隠していて。伊沢さんは私にすべて話してくださったのに｣

それなのに助けに来ていただいて、幻滅されても仕方ないくらいで、と堰を切ったように話し続ける彼女を制して、俺は笑った。

｢それくらいで幻滅するような男に見えますか？｣
｢…ふふ、見えないです。
伊沢さんは私のヒーローですから｣

眉を下げてやさしく笑った黒羽さんに、どくりと心臓が鳴ったのが分かった。
俺をヒーローと言った彼女を、この先も守りたいなんてささやかな願いは叶うだろうか。

数回しか会っていない彼女の"身バレ"にこんなに必死になってしまった理由も、ぐんぐんと上がっていく体温も、二文字で説明がついてしまうのなら。

料亭でふわりと笑った彼女を見た時から、どうしようもなく、俺はきっとこの気持ちに嘘をつくことはできないのだ。