【QK】すくうまで【伊沢拓司】 (ページ12)

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｢ごめんなさい。こんなに有名な方だったなんて。自宅にテレビがなくて｣

何も悪くないのに、謝罪をしたあと、黒羽さんは周りを気にして目線を泳がせはじめた。

｢私といたらまずくないですか？目的といったらなんですが、終わりましたし。解散しましょう｣

俺が止める前にテキパキと荷物をまとめると、席を立つ。

｢ハンドクリーム、ありがとうございました。大切にしますね。
なにかと不安でしょうし、連絡先は後ほど消去しておきます。先に出て会計を済ませておきますので、10分後くらいに出てきてください｣

機械のように喋り続ける黒羽さんを無理やり制して引き止めた。

｢黒羽さん、こういった場合の対応にお詳しいんですね。連絡先は是非そのままにしておいてください。またご飯行きましょう。
ここまで気を使ってくださるのは申し訳ないですが、正直とても助かるのも事実です。
誰か俺と同じ職種の方とお知り合いだったりしますか？｣
｢…｣

親近感を持ってもらえれば、と彼女のことについて話をすり替えたつもりだったが、黒羽さんはぼうっとして黙っている。

｢伊沢さんにお話する義務は…ないと思いますので。失礼します｣
そう言い放って、俺にお辞儀をすると黒羽さんは個室を後にした。