milk tea (ページ4)

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私の声は、「声」になっただろうか。すうっと息だけが抜けてた「音」だったと思う。

「よかった。分かってくれた」
『川、』
「川西です」

右手にコンビニの買い物袋。白いTシャツにグレーのスウェット。サンダルではなくてスニーカー。パジャマにしてはまだ時間が早すぎるから部屋着なのかな。部屋着もパジャマも同じかな。

「いつもはエコバック持ってるんだけどね。今日は忘れたから仕方なく。」

じっと体中を見渡す私に、自分が買い物袋を購入したことに気が引けてきたのかご丁寧に説明してくれた。

「仕事終わりですか」
『はい、』
「この辺で会うなんて、って言おうと思ったけど当たり前か。お隣さんだもんね」
『そうですね、』

私と同じ速度でゆっくりと隣を歩く、10センチか、15センチくらい大きい彼のシルエット。日が落ちていくと同時に、街頭が映し出す彼のシルエットが次第に濃くなっていく。

「その感じの服装だと、オフィス仕事？」
『はい、よくいる』
「羨ましいな。なんか。俺もスーツとか着てさ、丸の内の辺りとか肩ブンブン振って歩きたかったな」
『お仕事は、』
「してるしてる。でも在宅ワークっていうか。フリーで家具とかデザインしたり、しなかったり」

「ニートじゃないよ。」そう言って私にまた、細めたのその目を向ける。

「名前、聞いても良い？」
『え、』
「隣になったのもなんかの縁かなって。名字しか知らなかったから。気持ち悪いかな。警察呼ばないでね」

楽しい？

嬉しい？

違う、不思議。不思議なんだ。目の前で笑う彼が。その彼をこうやって見ていたいと思う自分も。

『Aです。』
「Aちゃんか。俺、拓実。呼び捨てでいいよ。」
『え、でも、歳とか、』
「いいよ。きっと同じくらいだと思う。いつか知るきっかけがあったら、そのとき教えてよ」

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