396 ページ46
***
「やめて…」
大貴「だまって…」
.
あの時の自分の行動に腹が立つ。
俺は何をやっているんだろう。
今まで気持ちを押し殺して我慢してきたのに。
一番好きで、一番守りたかった女の子なのに。
.
大貴「どうしたら戻ってくれる…?」
「え…」
.
誰でもいいから俺を殴ってほしかった。
自分から離れたくせに、馬鹿なこと言う自分に腹が立つ。
.
大貴「好きって言えよ…」
.
放つ言葉は自分の首をも締め付けて行く。
.
「ねぇ、何言って…」
大貴「俺だけを見ろって…!」
.
泣きたいのはAのはずなのに、
俺の目に涙が出ていた。
.
大貴「Aしかいないんだよ…」
.
俺は本当に“弱い”。
見返りを求めて、大切な人を傷つけて。
山田の性格を言える立場じゃなかった。
.
大貴「A…っ。」
.
震える口調でその名前を口に出したときにしたとき、
ふわりと、懐かしい香りが鼻を擽った。
.
「だい、き…」
.
Aは俺の首に腕を回していた。
一瞬、誰に抱きしめられていて、
誰が俺の名前を呼んだのか、分からなかった。
.
「…っ、ごめんなさい……」
.
Aは涙を溢していた。
苦しんでいた。震えていた。
.
「ごめんなさい…っ。」
.
目の前にいる俺じゃない、誰かに謝っていた。
それは、今から起きるであろう行為についてか。
もしくは…
.
大貴「A…んっ。」
.
Aは俺の身体を引き、キスをした。
深くて痛くて、そして苦しいキスを。
.
大貴「っ、A…っ。」
.
それは、何度も交わしたキスじゃなかった。
”それ”は苦しくて。
”それ”は後ろめたさが入り混じった…
.
「私が好きなのは…」
大貴「…っ。」
.
次の言葉を聞いた瞬間、
俺の目にもAの目にも、また涙が零れ落ちた。
.
一番弱いのは、山田じゃなくて俺だった。
今、目の前にあるものを自分のものにしたくて、
だけど…もう手遅れだった。
.
”私が好きなのは、涼介です”
.
Aの中にもう俺はいなかった。
***
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1417人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
愛(プロフ) - おはようございます♪何回見ても泣けるお話です（泣）続編見たいです★楽しみにしてます(•‿•) (6月17日 7時) (
レス) @page49 id: 170da3309e (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - ぱんださん» お返事遅くなりすぎて申し訳ございません…!何度も読み返してくださりありがとうございます。作った者としてこれ以上無い褒め言葉です。マイペース更新になりますがよろしくお願いいたします。 (5月27日 22時) (レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
ぱんだ(プロフ) - 私はこの作品のファンとして毎度更新を楽しみにしていました。終盤は涙が止まらなくなることも多く、気づけばこの作品にのめり込み、何度も読み返しています。そして何度読んでも毎度号泣しています。今作も楽しく拝読しています。これからも陰ながら応援しています。 (2023年2月5日 7時) (レス) id: 399b55da19 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - るん。さん» 嬉しいコメントありがとうございます!楽しんでいただけて嬉しいです。ちょうど今新作公開したので、お時間あればお越しください。 (2022年12月31日 18時) (レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
るん。 - 本当に本当に本当にお疲れ様でした。最初から最後までとても楽しく読ませて頂きました。小説の本を読んでるかのように読みやすく感情移入しやすかったです。1番好きな小説です！また新作できた際には拝見させていただきます！ (2022年12月18日 11時) (レス) @page49 id: fde368863d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まりも
| 作成日時：2022年10月8日 0時
