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「…っ、それは…」
.
慧「あ、ごめんね。誤解しないで。
責めてるわけじゃないからね。
大ちゃんとはなちゃんが決めたことに、
俺が口出しする権利なんてないし。」
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慌てて言葉を紡ぐ伊野尾先輩に
グラグラと心が揺さぶられる。
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そんな私を見かねてか、伊野尾先輩は私の頭を
ポンポンと二回撫で。
そのまま優しく手の平で包み込まれた。
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慧「…約束、守ってくれてありがとう。」
「え…」
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慧「“好きにならなくてもいいから
嫌いにならないで”ってやつ。
はなちゃんが今日来てくれて、
大ちゃん、嬉しかったと思う。」
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伊野尾先輩の視線の先は、私の膨れたお腹。
伊野尾先輩の手がゆっくり伸びてきて、
だけど触れることはなくて。
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慧「…お腹の子が産まれたらさ、また会いに来ていい?」
「はい…」
慧「ふふ…ありがとう。」
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伊野尾先輩がのそりと立ち上がる。
私も立とうとすれば、伊野尾先輩に止められて
顔を上げれば、その視線は私の後ろに向いていた。
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「伊野尾先輩…?」
慧「タクシーまだなんでしょ?山田のこと、待っててあげなさいな。」
「え…」
慧「またね。」
.
伊野尾先輩が目尻を細めて、
もう一度くしゃりと私の頭を撫でる。
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私は撫でられた頭を手で押さえて、
ぼんやりとその後ろ姿を見つめて。
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伊野尾先輩が、涼介に何かを話しかけていた。
それが何なのかは分からなかったけれど
涼介は、ほんの少し嬉しそうな。
だけど寂しそうな顔を浮かべて。
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伊野尾先輩に軽く頭を下げると
涼介が、私のところにやって来た。
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涼介「…A。」
「りょうすけ…」
涼介「一緒に、帰ろう?」
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愛(プロフ) - おはようございます♪何回見ても泣けるお話です(泣)続編見たいです★楽しみにしてます(•‿•) (6月17日 7時) (レス) @page49 id: 170da3309e (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - ぱんださん» お返事遅くなりすぎて申し訳ございません…!何度も読み返してくださりありがとうございます。作った者としてこれ以上無い褒め言葉です。マイペース更新になりますがよろしくお願いいたします。 (5月27日 22時) (レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
ぱんだ(プロフ) - 私はこの作品のファンとして毎度更新を楽しみにしていました。終盤は涙が止まらなくなることも多く、気づけばこの作品にのめり込み、何度も読み返しています。そして何度読んでも毎度号泣しています。今作も楽しく拝読しています。これからも陰ながら応援しています。 (2023年2月5日 7時) (レス) id: 399b55da19 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - るん。さん» 嬉しいコメントありがとうございます!楽しんでいただけて嬉しいです。ちょうど今新作公開したので、お時間あればお越しください。 (2022年12月31日 18時) (レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
るん。 - 本当に本当に本当にお疲れ様でした。最初から最後までとても楽しく読ませて頂きました。小説の本を読んでるかのように読みやすく感情移入しやすかったです。1番好きな小説です!また新作できた際には拝見させていただきます! (2022年12月18日 11時) (レス) @page49 id: fde368863d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まりも | 作成日時:2022年10月8日 0時