毒林檎のつくりかた 8 (Daiki＆Ryosuke)

361 ページ11

***








「え…」









.








抱きしめられてると分かったのは、

涼介の震えが振動として伝わってきたから。










.









腕の力加減。温もり。感触。匂い。

どれも久しぶりで懐かしかった。










私は涼介を抱きしめることも、拒むことも出来ず、

手が宙ぶらりんになって。








.








涼介「A…」








.










昔から涼介が怒ったり、少しでも機嫌が悪いだけで

私は簡単に折れていた。









.












だから、悲しいのか、怖いのか、何も分からないのに

瞼の奥が熱くなって、泣きそうになって。









それを察した涼介は、すぐに焦った顔になって、

私を泣かせないために、あれこれ言いながら慰めていた。








.








涼介「よく聞いて。」








.








だけど、今回は違っていた。

涼介の身体がゆっくり離れて、ジッと私を見据えている。








そして、涼介がポケットから何かを取り出て

私の前に差し出す。









.








「キャンディ…?」








.








取り出したのは、ぐしゃぐしゃになった

林檎味のキャンディの袋。








.









「なにこれ…」









.








小さく呟き、涼介の顔を見上げると

微笑んでいた涼介の顔が崩れていた。










よく見れば、涼介の目は赤かった。

その頬には、乾いた涙の跡があった。










.








涼介の唇は震えていて、

落ち着こうとゆっくり息を吸う。










だけど、耐えられなくなり、

涼介は涙を零した…









.







涼介「大ちゃんが、死んだ。」










***

362→←360

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す