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***
先生が、目の前で頭を下げて謝っている。
驚きのままにピタリと涙が止まり、
すぐに先生の真剣な眼差しとぶつかった。
.
優雪「なん、て…」
.
目を見開き、目線を逸らさない私に、
先生の顔が辛そうに歪む。
そして、ほんの少しの沈黙の後…
返ってきた言葉は、さっきと同じ3文字だった。
.
大貴「ごめん。」
優雪「…っ。」
.
謝ってほしい訳じゃなかった。
そもそもなんで今さら謝られるのか。
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心の奥底でジワジワと燻るのは、憐れみの視線。
顔を背けたくても、先生の視線がそれを許してくれなくて
私は下に俯く。
.
大貴「何も気づいてあげられなくてごめん…」
優雪「…っ。」
大貴「ゆきちゃんをここまで追い詰めてごめん。」
優雪「…やめて。」
大貴「…優しくできなくてごめんなさい。」
優雪「やめてください…」
大貴「付き合ってたのに最後まで好きになれなくてごめんなさ…」
優雪「もうやめてよ!」
.
もう先生の胸を叩くことも、顔を背けることも出来ないから、
力いっぱい拳を握り締めるのがせめてのも抵抗だった。
.
早く消えてしまいたい。
どこかに行ってしまいたい。
私も先生も、記憶喪失になってしまえばいいのに。
何もなかったことにしたい。
.
私、さっきからこんな馬鹿でくだらないことばかり考えてる。
だからいつまで経っても花寺Aに勝てないんだ。
ずっと誰かの一番になれなくて、
もう先生を好きでいることが、苦しくて…
.
優雪「…困らせてごめんなさい。」
.
しばらくして落ち着いて。
私の口から出たのも、謝罪の言葉だった。
.
私はただ、誰かの一番になりたかっただけだった。
パパの一番になりたくて、先生の特別になりたかった。
そんな絶対に叶わない、幸せな夢…
私は馬鹿みたいに見ていた。
.
優雪「…たぶんもう、私と会うことはないと思うので
安心してください。」
大貴「ゆきちゃん…?」
.
大貴が…
先生が、心配そうに私を見てくる。
.
もうそんな目で私を見ないでほしい。
惨めにさせないでほしい。
だから、私は笑顔で言うんだ…
.
優雪「…パパとママ、離婚することになりました。」
***
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作者名：まりも
| 作成日時：2022年5月15日 21時
