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***
「なんで…」
.
途端、優しい味が広がって
思わず口を押さえる。
.
不味いとか、美味しいとかじゃない。
とても“懐かしい”…
.
この味を食べたのは、初めてじゃなかった。
.
高校生まで働く母の代わりに
文句言わず、作ってくれて、
大学生になっても、家事の苦手な私に
いつも作ってくれて。
私はそれを毎日のように口にして
“その人”は頬杖をつきながら私のことをジーっと見ていた…
.
誰が置いていったかなんて、
すぐに分かってしまった。
こんなの、“彼”以外
いないじゃない…
.
「…っ。」
.
私の視界が一気にボヤけて。
思い出したように溢れだしてきた涙を、
顔の前で交差させた手の甲で隠す。
.
「なんで…」
.
ひどいことを言ったのに、
彼はいつも私を突き離さない。
顔は出さないけど、
ずっと傍にいてくれる。
.
“ありがとう”なんて、思っていなかった。
“ごめんなさい”とも思わなかった。
.
ただ、彼が…
涼介が優しくて、優しすぎて。
これが、涼介からの
“謝罪”のようにも思えて。
.
私は、涼介が作ってくれてたご飯を
食べることにした…
***
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作者名：まりも
| 作成日時：2021年6月20日 23時
