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***
ここに戻ってきて一週間は
本当に何にも口にする気にはなれなかった。
ふわふわと、雲の上を歩いているかのように、
何だか現実感の伴わない日々を過ごしていた。
.
それでも、多少は冷静になれたと思う。
母と過ごしていたアパートにいると
鼻の奥がツンとして、みっともない嗚咽が零れた。
.
一緒にテレビを見て笑っていたことを思い出して。
硬い母の肩を揉んでいたことを思い出して。
この部屋に残っている、微かな母の匂いが
鼻を擽って…
.
あぁ、もう母はいないんだと。
母の死を悲しむことができる程度には、
余裕が出てきたのかもしれない。
その途端、お腹の虫が鳴って
本当、大したもの…
.
かといって、台所に立つ気にもなれない…
というか、料理をするのが苦手たったし。
仕方なく、この日は惣菜でも買おうと
久しぶりに外に出たら…
.
「え…?」
.
外のドアにぶら下がっていた袋。
中を見てみると、タッパーに詰められた
出来立てのおかず。
.
最初は、誰かが他の部屋と
間違えたんだと思っていた。
だけど、次の日もその次の日も、
丁寧に置かれていて。
間違えではなく、
意図的に置かれたもの…
.
もしかしたら、変なものが入ってるかもしれない。
こんなもの、食べるわけにはいかない。
そう思っていたのに、日々の空腹に耐えられなくなって、
つい、食べてしまった…
.
「これ…」
***
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作者名：まりも
| 作成日時：2021年6月20日 23時
