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明穂「で、これからどうするの?」

「え?」








明穂「ここ、引き払うんでしょ?

どこかに引っ越すの?」









.









三人の足音が遠かったのを見計らったように

唐突に明穂さんが聞いてくる。








.










「正直まだ何も考えてなくて…

しばらくは学生マンションだけど、そこも出て行かないとだし…」







明穂「ふぅん。やっぱり出て行くんだ?」








.









素っ気ない返事。

聞いてきたのにやっぱり興味ないような感じで…








私は曖昧に笑ってやり過ごそうとして。

でも、その前に……








.









明穂「やっぱり、元カレと隣の部屋はしんどいか。」

「…え?」








明穂「それに、義妹である優雪に

仕組まれてたものとしたら尚更…」









.








独り言のような呟き。

最初は何のことか分からなくて…








でも、わざと私に聞かせてるような言い方で

思わずそれに反応してしまった。









.








「知ってたんですか…?大貴のこと…」

明穂「あぁ、前に優雪から紹介されたことあったし。」








「じゃあ…私と大貴のことは…」

明穂「それは直接聞いたことなかったけど、何となく。」








「…っ、私と、ゆきちゃんが異母姉妹ってことも…?」

明穂「最近の優雪と二人の顔見ればね。簡単に察しがついた。」








.








興奮気味な私と正反対で

あくまで冷静な明穂さん。








淡々と答える彼女に喉がカラカラと乾いてしまう。









.








明穂さんは、やっぱり知っていた。

それも全部。








知っていて、第三者としてただ傍観していた…







.







「なんで…」

明穂「ん?」








.









そんな彼女に私は焦燥感に駆られるような感情になり

大声を上げてしまった。








.









「じゃあ、何で教えてくれなかったんですか!」

明穂「…何を?」








「全部知ってたんなら教えてくれたら

良かったじゃないですか…!」








.








明穂さんは私の目をジッと見つめたまま

何も答えてくれない。









耐えがたい沈黙がますます身体を圧迫して、

呼吸が苦しくなっていく。








.










「……っ。」









.








掛け時計と自分の心音だけが響く静寂の中、

明穂さんが一度、大きく息を吐いた。









そして、そのままゆっくりと口を開き…








.









明穂「…何であなたに教えなくちゃいけないの?」









***

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作者名:まりも | 作成日時:2021年6月20日 23時

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