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「勉強…大丈夫?」








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ダイキ…








その名前が出た瞬間、息を呑んでしまい、

私は咄嗟に話題を変える。








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どうして彼女の口から大貴の名前が出てきたのか

分からないけど…









動揺してるのが悟られないように、

きゅっと唇を噛んで。









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そうすると、彼女は私の様子に気付くことなく

サァッと顔を青ざめた。









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「はなひどい。私が大丈夫に見える?」

「…見えないから聞いた。」









「アンタ…何気にグサっと来ること言うね。」









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はぁぁと盛大にため息をついて頭を抱える彼女。









私はそそくさと荷物をまとめて

椅子から立ち上がった。









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「もう帰るの?」

「今日は…家の整理しないとだから。」









「家って、地元の?そういえば鞄も大きいね。」

「…そう。また今度ね。」








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友人に手を振り、食堂から出ると

肌寒い空気に包み込まれる。









肩に背負った空っぽの大きな鞄。

ゆっくり息を吐くと、白い息が出た。








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ここは木枯らしが吹いてるけど、

向こうは雪…降ってるかもしれない。








そんなことを思いながら、首に巻いてるマフラーを

ぎゅっと握る。









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春、夏、秋。

そして、季節は秋から冬に変わっていく。









この一年は長かった気がする。

色んなことがあり過ぎて、とても濃かった。









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大貴と再会して、涼介と付き合うようになって、

母が亡くなり、父と義妹の存在を知って。









初めて、涼介と離れ離れになった…








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「さむっ…」









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電車を乗り継ぎ、駅から降りると

肌寒い空気が私を包み込み、見慣れた景色が広がる。









辺り一面真っ白…ではないけど

やっぱりここは、今住んでるところよりずっと寒い。









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荷物を抱え直して、家路に着こうとすると

横に誰かがいる気配を感じた。









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「え、なんで…」









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その“人たち”は、目を合わせるとにっこりと微笑み。









一人は、私にホットココアを差し出して

もう一人は腕を摩りながら、さみぃって何度も呟いて。









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光「おいおい、俺の地元と比べたら全然だって。」

慧「俺都会育ちだからさみぃんだもん。」









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そこにいたのは…本当に何故か分からないけど

八乙女先輩と、伊野尾先輩…だった。









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作者名:まりも | 作成日時:2021年6月20日 23時

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