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涼介「それなのに、お前を守るために
大ちゃんが別れたなんて言えば…
お前、大ちゃんとこ行くに決まってんだろ?」
.
その顔は何故か怖いほどに穏やかで…
私はゾッとする。
.
涼介は笑っていた。
何かを諦めたような表情。
その”何か”は、分かっていた。
分かっていた、けど…
.
涼介「こんな俺に、嫌悪感するだろ?」
.
肯定も否定も出来なかった。
確かに私は涼介のことが許せない。
しかもその理由が、大貴…
.
けど、ここまで涼介を追い詰めていたのも私で
私は、涼介を責める資格はなくて。
.
さっきゆきちゃんが言い放った言葉を思い出す。
“私は、涼介を裏切る”と。
“私を選んだことを後悔する”と…
.
涼介「何も言わないってことは、やっぱそうなんだな。」
「…っ。」
涼介「Aがそんな顔する必要ないって。
悪いのは俺なんだから。」
.
そう言って、涼介がいつものように
私の頭に手を置こうとする。
だけど、その手は私の頭に触れることはなくて、
ゆっくり下された。
.
涼介「ごめんな。」
.
涼介がもう一度頭を下げる。
.
涼介「俺のこと好きじゃないの分かってたのにさ。
あの時、Aの優しさに漬け込んで、
俺の気持ちに応えられるか聞いて、ごめん。」
.
あの時…私が風邪を引いた時。
初めて、涼介の気持ちを知ったとき。
.
涼介「本当は分かってたんだよ。
お前、優しいから。絶対俺の気持ちに応えるって。」
.
今の涼介と、あの日の涼介の表情が重なる。
涼介の震える声と、祈るような瞳。
悲しそうで、今にも泣きそうな顔。
.
涼介「けど、いつか振り向いてくれるって
やっぱり信じちゃって…」
.
悲しい言葉を並べる涼介に、
私は今、どんな顔をしているのだろう。
あの時の私は、どんな顔をしていたのだろう…
.
涼介「だって俺、誰よりもお前のこと
好きな自信あったもん。」
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作者名:まりも | 作成日時:2021年6月20日 23時