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***
涼介 side…
ただ立ち尽くすAを
無理やり家に入れた。
.
幸いにも両親は旅行で不在中。
おばさんも、今日は用事があるとかで
いないらしい。
.
キィ、とリビングのドアが開いて
Aが入ってきた。
.
涼介「あったまった?」
.
お風呂上がりのAは相変わらず生気はなく、
何も言わない。
.
聞きたいことはたくさんある。
何でびしょ濡れだった?
いったい何があった?
ダイキって、誰…?
.
涼介「…はい。」
.
Aが風呂に入っている間に作ったココアを出す。
Aはそれを一口飲んだ。
.
「……あったかい。」
.
ポツリと消えそうな声で呟くA。
そして、Aの大きな瞳から、
ぽろぽろと涙が零れ落ちた。
.
涼介「A……」
.
拭おうと手を伸ばした。
だけど、Aはそれには気付かず自分で拭う。
白くて細長い、今にも折れそうな指で。
.
「去年の秋から大貴と付き合ってた…」
.
主語も何もかもぶっ飛ばして
その言葉が、聞こえてきた。
.
涼介「そのダイキって…」
「有岡大貴、先輩…」
涼介「そっか。」
.
ダイキ、大ちゃん…
去年の秋。
Aと大ちゃんが一緒にいるところを見たのは
文化祭のとき。
.
「今日は久しぶりに会う約束してた。
大貴は来なかった。」
.
今にも崩れ落ちそうなA。
思わずゴクッと唾を呑み込んだ俺を見て、
Aは淡々と言葉を続ける。
.
「…別れてほしいってLINEが来てた。」
涼介「は…」
.
Aの目からは、止まる事のない涙が
ぽろぽろと零れていた。
大ちゃんが?
なんで…?
.
「突然だった…訳が分からなくて。」
涼介「うん…」
「涼介…」
涼介「ん?」
.
Aは昔から知ってる
可愛い妹じゃなかった。
.
「こんなことになるなら私、
大貴を好きにならなきゃよかった。」
.
いつの間にか自立して、
いつの間にか、恋をしていた…
一人の女の子だった。
***
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作者名：まりも
| 作成日時：2020年1月2日 21時
