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***









しばらく続いた沈黙。

破ったのは、先輩だった。









.









大貴「……知ってる。」









.









家路につく私たち。

大貴先輩は…首を傾ける。









.









いつもの明るい声ではなく、

低めで男子特有のぼそぼそした感じ。









見た目とは不釣り合いな

先輩の喉仏を見つめる。









.









大貴「…1ヶ月後、模試があるのね。」

「…?はい。」









大貴「うん…あるのね。」









.









ポツポツと降ってくる声。

ポツポツと頬をかく先輩。









.









大貴「んーとね…もし…もしだよ?」

「…はい。」









大貴「模試で点数上がってたらご褒美、ほしいの。」

「ごほうび、ですか…?」









大貴「そ、ご褒美。」









.









自宅前。









すっかり暗くなった世界で

先輩の顔が淡く灯る街灯に照らされていた。









.









大貴「お家デート、したい。」









.









先輩は、少し顔が赤かった。

下唇を噛んでいた。









…真っ直ぐにこちらを見ていた。









.









大貴「Aのはじめてがほしい。」









「はじめて…?」









.









頭の中がハテナでいっぱいになる。









私は…何も知らなすぎた。

その意味を理解することを。









.









目の前の先輩は、明るくて人気者の

有岡大貴じゃなかった。









オトナの有岡大貴じゃなかった。









目の前にいるのは、

まだ私の知らない“有岡大貴”…









.









「…っ、あの…それは…!」









.









“はじめて”

理解した瞬間、顔が熱くなった。









.









「えっと、えっと…

だから、その……」









.









しどろもどろになって、

上手く口が回らない。









.









だって…早すぎる。

付き合ってまだ二週間なのに。









まだ“大貴”って呼べてないのに。

キスするだけでも緊張しちゃうのに…









恐らく、暗闇で見ても分かるくらい

顔が真っ赤…









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作者名:まりも | 作成日時:2020年1月2日 21時

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