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______羽宮一虎が男を一人殺して少年院に入った。
その知らせはたった数人で構成された東卍内を震撼させ、何かの間違いだと皆が口々に言った。
一虎は若干不安定な所もあるが、人を殺すような奴ではない。
いや、正確には簡単に人を殺せる目をしているが、ある女の存在によって一線を踏み越えないでいた。
そしてこれからも、そのギリギリのバランスは保たれていくものだと思っていた。
一体、何があった。
一虎の身に、一体、何があったんだよ。なぁ。
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「……ここか」
一虎の逮捕から数日後。
家族じゃねぇからとかで面会を拒否されたオレは、仕方なく一虎がよく口にしていた【子ども食堂】を訪れた。
そこで働く"A"という女に話を聞くためだ。
……感情の見えないアイツの目が、唯一その名前を口にするだけで輝く、Aという女に。
「あのー」
「……あ、お客さん?ごめんなさい。まだ準備出来てなくて。今ご飯作ってくるから」
「いや、そーゆうんじゃなくて。ここに、一虎の言ってたAって奴、居ますか」
「…………一虎の友達か。良いよ、上がって。お茶持ってくる」
マイキーん家みたいな古い感じの扉を開けると、木製の長椅子に腰掛けた女と目があった。
そいつはオレの問いには答えず、ただその辺の席へ座るよう促して、自分は奥の厨房らしき所に消えていく。
入り口で立ち尽くすのもあれで、近くの長椅子に腰掛けてから、なんとはなしに室内を見渡す。
内装は昔ながらの飲食店って感じ。
壁に貼られたメニュー表は色んな子供が書いたのか、綺麗だったり汚かったり疎らだ。
その中で、オレはあるものを見つけて立ち上がった。
「…………これ、」
「子供達と一虎が一緒に撮った写真だ。私はカメラ担当だったから、映ってねぇけどな」
「うおっ、アンタ居たのかよ」
「そんなビクビクすんな。別に取って食いやしない」
困ったように笑う顔がどことなく一虎と重なって、「そこ、座りな」と言われるまま女の正面に腰掛ける。
緊張のせいか、喉はカラカラに乾いていた。
欲求の赴くまま出された茶を一気に煽って、はぁ、と息をつく。
……この女が、一虎の。
「なぁ」
突然話しかけられたせいか、返事をしようにも声が出ない。
そんなオレを見透かすように、女は頬杖をついてこちらを見上げてきた。
「オマエ、場地だろ」
「は、」
なんで、オレの名前。
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黒崎結利加(仮名) - うぅ、、、な、涙がぁ、、、何回読み返したのだろうか。この作品に出会えてよかったです‼主様、これからも頑張ってください!応援してます‼(え、イラストうますぎません?教えてください‼師ショー((殴) (2023年4月6日 3時) (レス) @page34 id: 5c1ce3d064 (このIDを非表示/違反報告)
Naifu - 凄い作品ですね!歳離れてるのってなんか変な感じで終わるのかな…なんて失礼なこと思ってたんですけど、まとまりとかお互いの関係的なものがよくて夢中になって読みました!本当になんか心があったまりました。これからも頑張って!無塩バターさんのこと応援してます! (2021年12月6日 20時) (レス) @page33 id: 1c04a135ec (このIDを非表示/違反報告)
無塩バター(プロフ) - 姫乃さん» 小説の方もイラストの方も褒めてくださりありがとうございます!感じたことを言葉に表すのって難しいので、なんかいいなと思って頂けただけでも嬉しいです!確かに、作者自身もよく逃げ出したいと思うことがあるので、自然と案が浮かんだのかもしれないです(笑) (2021年11月21日 17時) (レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
姫乃(プロフ) - とっても素敵な小説でした!!その上絵もお上手で!!なんて言うか上手く言えないけどなんかいいなって思える素敵な作品でした!!主様が平日更新が忙しい。ということを言ってらっしゃってそんな主様だから書けた作品なのかななんて思ったり。素敵な作品でした!! (2021年11月19日 1時) (レス) @page35 id: 1356d63b83 (このIDを非表示/違反報告)
無塩バター(プロフ) - ミルクレープさん» コメントありがとうございます!きっと彼らの絆はこの先一生切れることなく繋がっていくんだろうと思います。こういう少し歪だけど何よりも綺麗な絆が大好きなので、そう言っていただけて嬉しいです!文才はすずめの涙程しかないのでご勘弁を(笑) (2021年10月31日 20時) (レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
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