24 〈兄の話〉 ページ24
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A脱走事件の翌日。佐野家では予定通り、Aの歓迎会が行われた。
とは言っても祖父以外の面々は夜中に動き回ったこともあって寝不足状態。歓迎会を行うコンディションとしては最悪である。
ケーキを作ったエマも何度か砂糖と塩を間違いかけ、危うく高血圧不可避なしょっぱいケーキが完成するところだった。そんな悲劇を回避したとも知らず、祖父と万次郎は用意されたケーキをうまいうまいと食べ進めた。
そんな中Aはというと、小さなフォークを手に暫く硬直していた。
生まれてこのかた『ケーキ』と言うものを食べたことのなった為、どう手をつけるべきなのか困惑していたのだ。
「あれ、食べねぇの？」
「ケーキ嫌いだったのかな？」
心配そうに顔を覗き込まれてAは戸惑う。
食べたことがなくてどうしたら良いか分からない、と上手く心情を表現出来れば楽なのだが、彼女にそこまでの語彙力はまだない。
首を振るのが精一杯のAの瞳から、次第に涙が溢れてくる。何も言葉に出来ない自分に対して初めて苛立ちを感じた。それが色んな感情と混ざり合い、涙となって溢れてしまっていた。
これには「チョコよりショートの方が良かった？」「いや寧ろチーズケーキの方かも」なんて話していた佐野兄妹も目を見開く。
え、自分らが見てない間に一体何が？
「ええええどうしよマイキー、Aちゃん泣いちゃったよ！」
「なんでそこでオレに振るわけ？！んなの分かるわけねーじゃん！」
「食べたことがないんじゃろ」
やいやいと言い合う兄妹の間を祖父の声が通り抜ける。まさしく鶴の一声。
冷静な一言にエマと万次郎は顔を見合わせ、次の瞬間にはここぞとばかりにフォークで自分の分のケーキを刺し、Aの口元に差し出した。
突然のことに驚きながらもエマのケーキを口に入れてみるAの姿を、ワクワクと見つめる四つの目。祖父の目はそんな光景を微笑ましそうに見ていた。
生まれて初めてケーキを食べたAの表情は一気に華やいだ。
それこそパアアアというような効果音が付きそうなほどに明るくなり、辺りにはパステルカラーの可愛らしい花が舞っていた。
その隣では、音を立てないようにタッチを交わす佐野兄妹の姿。
こういう時の息の合い方は恐ろしくピッタリだ。
「A、オレのも食って！」
「それ味全部一緒でしょ！マイキーは自分で食べなよ」
「はぁ？ちげーもん。オレの方が甘いし！」
「一緒ですぅ」
正直、Aのお腹はもういっぱいである。
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レモン - サイコーすぎんだろ‼️ 応援してます😆 (2022年7月2日 13時) (
レス) @page50 id: 97f09e59d6 (このIDを非表示/違反報告)
無塩バター(プロフ) - ぺたごんさん» ありがとうございます！今日中に続編に移行するつもりなので、続編もよろしくお願いします！ (2021年11月13日 8時) (レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
ぺたごん - すごくすき愛した だぁじに悶えてます 続編待ってます！ (2021年11月13日 1時) (レス) @page50 id: 660f048392 (このIDを非表示/違反報告)
無塩バター(プロフ) - ただのバカですさん» そうです三ツ谷くんです（笑）多分本文でも書くと思うんですけど、みつや→みつゃ→みちゃ 的な流れから、みちゃになりました。続きものんびり頑張ります！ (2021年10月23日 0時) (レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
ただのバカです - みちゃ？あっ、三ツ谷くんの事ね。え！？可愛くねぇ？みちゃだよ？胸取れるわ。ムフフ続き楽しみに待ってます。 (2021年10月21日 7時) (レス) @page45 id: acf5fa610c (このIDを非表示/違反報告)
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