. ページ27
.
______ガチャ…
『お待たせ』
「大丈夫。全然待ったよ」
『待ったんじゃん』
「でも、この部屋Aの匂いでいっぱいだったからさ」
『………。』
"でも"の使い方がやっぱり何処かおかしなジョンウは無視して、折りたたみ式の小さなサイドテーブルを引っ張り出した。その上にリンゴジュースが注がれたグラス２つと、小分けにされたチョコチップクッキーを６つ並べる。
なんとも簡単な作業だというのに、震える手を抑えられずに少しだけリンゴジュースをテーブルの上に溢してしまい、急いでその薄茶色の小さな水溜まりをティッシュペーパーで拭った。
その間にも、チクチクと刺さる視線
それは、普段私が寝るために使っているベッドの上に遠慮なく腰を下ろしているジョンウからするものだ
「なに？緊張してるの？」
『してないっ…』
「嘘。耳まで赤くなってるよ、可愛い」
本当にやめて欲しい。何度も言うように私はまだ心の準備が出来ていないのだ。
ジョンウの中ではもう既に受け入れてしまったその感情は、私の中では未だに宙を舞っているというのに。
______ジリリリー…ボンッ！
スイッチを押してからようやく稼働しはじめたストーブの音がやけに響く。
その瞬間に、独特の灯油の匂いが鼻を掠めた
冬にしか嗅ぐことのないこの匂いが私は嫌いだ。なのにどうして今、この匂いにすら胸を高鳴らせているのだろう
「今日は手繋がないの？」
『繋ぐ理由がないでしょ』
「あるよ。俺が繋ぎたい」
『そんなの………』
なんの理由にもなってないよ、と言いたいのに。なんで言えないのだろう
ジョンウが口にした言葉は、なんでこんなにも正しいような気がしてならないのだろう
なんで私は
そんな彼と
手を繋ぎたい、と
思ってしまっているのだろう
.
.
『あのさ、手を繋ぐだけじゃ我慢できないってジョンウ言ってたでしょ…？』
「うん。そうだね」
『教えてほしいんだけど。友達の境界線が手を繋ぐまでの行為なら、恋人同士がする行為はどこからなの？』
「んー……ギューとか？あ、あとチューとか」
『！！そ、そんな事を私としたいの？』
「いや？それだけじゃ足りないって思ってるけど？」
.
ニヤニヤしながら私を見つめるジョンウ。
そんな彼に、『なにそれ、意味わかんない』と言って、力一杯顔を背けた
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 568人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
run(プロフ) - おもちさん» こちらこそ、そんな素敵なコメントをして下さりありがとうございます🥹🙏💓 (9月22日 16時) (
レス) id: 8f6ebbdacb (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - 心温まる素敵なお話ありがとうございました😌💚 (9月15日 19時) (レス) @page49 id: db91ee34e8 (このIDを非表示/違反報告)
run(プロフ) - もちこさん» もちこさん！とても素敵で感動的なコメントありがとうございます😭めちゃくちゃ嬉しいです〜（ ; ; ）❤️これからももっともっといい作品を作っていきたいと思ってるので、是非よろしくです🙇♂️💙 (9月13日 9時) (レス) id: 8f6ebbdacb (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - 文字数の関係からいくつもコメントしてしまい失礼致しました💦 今後もrunさんの作品を楽しみに応援しております.......🙏🏻💚 (8月21日 1時) (レス) id: fa93449f5b (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - 登場人物全員が魅力満点で、ずっとこの世界を眺めていたいなあと噛み締めております😂連載お疲れ様でした、本当に素敵な作品をありがとうございます！ずっと心に残り続ける大好きな作品です😭 (8月21日 1時) (レス) id: fa93449f5b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：run | 作成日時：2023年1月23日 16時
