第五十三話 とある少年の独白 ページ6
俺が最初にAと会ったのは今よりもずっと幼い頃だった。
今世の俺にとって初めての後輩だった。
俺だって前世は何十年も生きていた。忘れられないような記憶なんてごまんとある。せわしなく過ぎていく忍者としての日々はあの穏やか…とは言い難いがあの日常を思い出すには些か暗い世界だった。
だから最初から前世の記憶が鮮明だった訳じゃない。
ましてや小さい頃のAの姿なんて知るわけが無い。
それで言うなら性格も大分猫を被っていた。
会ったばかりはせんぱい、せんぱいと後ろを歩かれていたものの最近は冷ややかな視線を感じたり生意気さが表に出ててきていた。俺のかつての同室に似ている。
最初の方こそ名前こそは聞いた事あるものの思い出すのに時間がかかった。
ただあいつの背が伸びていくにつれて、歳をとるにつれてそれが鮮明になった。
あいつがどんな思いであの時の俺らと接していたのかは分からないが俺達に対して絶大な信頼と期待を背負っていたのは確かである。
内心、今の俺達と比べて若干馬鹿にしたり面倒くさがったりは確実にしていただろうが。
それでもその信頼と期待に応えるのが先輩としての役割だろう。
そういう事でAを小平太に預けて体力作りをさせたり俺なりに忍者の心得や忍術だとかの知識を教えてみた。
．
｢酷い!!鬼畜!!ばか!!あほ!!おたんこなす!!ちゃめもんじ!!｣
｢ちゃめもんじは無いだろ。あと俺は先輩だ。｣
ぜえはあと肩で息をしながらAは言った。
｢…先輩、嫌いです。呪います。｣
何でこんなことしなきゃいけないんですかぁ〜とへばっているAが恨み言のように呟く。
｢忍者ならそれ相応の体力が必要だろう？知識も。｣
｢うわでた忍者オタク…先輩のお陰で将来忍者村とかで就職出来そうです私。｣
｢自分の力を過信しすぎるな忍者の三病だぞ。｣
｢忍者じゃないです私！というかなんで会計委員の私がこんな体育委員みたいな事してるんです!?｣
意外にもこいつは疲れるとキレるタイプだ。
｢鍛錬は必要だろう。それにお前は会計委員会の体力作りをサボりすぎだ。｣
｢だってぜったいひつようないですあれ！！｣
｢いつか役に立ったらその言葉訂正するんだな。｣
その言葉にまた腹を立てるA。
これは俺のAへの贖罪でもある。
それでも
ただ純粋に、自分の大事な後輩に、
あの戦乱の世を
生きて欲しい。
生き抜いて欲しい。
その一心だった。
以上今世潮江の独白
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うん！ - 澄香さん» コメントありがとうございます！八左ヱ門には頑張って欲しいですね〜 (4月12日 20時) (
レス) id: 7fb5738de5 (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - 八左ヱ門ッッ！！！好きだ！！いつも楽しく拝見してます！頑張ってください！ (4月7日 1時) (レス) @page8 id: 8b8bcc9d2b (このIDを非表示/違反報告)
うん！ - えだまめさん» わー⁉︎一気読みですか⁉︎ありがとうございます。頑張ります！ (3月25日 0時) (レス) @page1 id: 5a2711bae6 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ(プロフ) - めちゃくちゃ面白くてここまで一気読みしてしまいました…✨✨これからも更新頑張ってください！応援してます！ (3月23日 12時) (レス) @page1 id: 7ac8ba9ab7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うん！ | 作成日時：2024年3月22日 16時
