第四十六話 不在 ページ48
この部屋の扉は障子なのでノックのしようがない。
そのため声をかけるのが普通である。多分。
「失礼します。山田先生はいらっしゃいますか。」
障子の奥にある部屋へと届くように声をかけるとまさかの障子が開いた。
しかしそこに居たのは探していた山田先生ではなく土井先生だった。
この間の事もあってあまり会いたくなかった人である。
「なんだ君か。山田先生はいらっしゃらないぞ。」
「私です。すみません。山田先生がどちらにいらっしゃるかご存知ですか？」
土井先生が出てきたということは恐らくいらっしゃらない。のでヒントを伺った。
「うーん。そういえば先程山田先生、利吉くん…山田先生の息子さん…って知ってるか。利吉くんから手紙が来てたから校舎の裏の方に行くと仰ってたなあ…」
「裏…わかりました。ありがとうございます。失礼しました。」
「あぁちょっと待って。」
その場から一刻も早く逃走したい思いが強すぎてすぐに会話を終わらそうとすると待ったがかかった。
非常に残念である。
「聞きたいことがあるんだけどその歩き方、どこで習ったんだ？」
歩き方？なんの事だ？と頭の中にハテナを浮かべていると「その歩き方は忍び足とよく似ている。」と言われた。
確かに以前此処に来た時は事務ではなく授業を受けたのだけどその時に歩き方を習ったような気がする。ああそうだ。習って毎日それを続けていたんだ。あまりに抜き足差し足忍び足をしている自分が不格好すぎて。
いつの間にか癖になっていたようだ。
「うーん昔どっかで習ったんだと思います。」
ふわっとした回答に腑に落ちないような顔をした土井先生。
こちらも必死なのである。許して欲しい。
「それとだ。君の事務仕事は掃除と書類整理くらいで外に出るようなものでは無かったはずだ。どうして山田先生を探している？」
疑うような目つきの土井先生には悪いが答えは決まっている。
「出世です。」
「出世〜？」
またもや私を疑わしいような目で見てくる土井先生。
あまりにも信用が無さすぎて笑えるが多分これくらいが本来あるべきだろう。
質問には答えた為この場を去ろうとしたが言い忘れていた事があったので立ち止まった。
「この間仰っていたこと破るかも知れませんがあくまで事務仕事という不可抗力に過ぎませんので見過ごしてください。」
よしよしよし。予め布石を打っておいたのでこれで土井先生に殺されることは無いはずだ。多分!!
私はいそいそと校舎裏の方へ向かった。
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うん！ - ほうじ茶さん» お褒め頂きありがとうございます。これからも楽しんでいただけると幸いです (1月21日 2時) (
レス) id: 7fb5738de5 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - 今まで読んだ天女作品の中でダントツ面白いです！こういう性格の子好きです (1月18日 23時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うん！ | 作成日時：2023年12月24日 1時
