第三十二話 無傷 ページ34
威嚇全開で二匹を抱え込みながらこちらを睨む孫兵に眉を寄せる。
心配せずとも非常事態以外こいつに関わる気は全く無いので安心してほしい。
なぜならこの伊賀崎孫兵とかいう男は私にとって竹谷八左ヱ門の次くらいには天敵である。
当然虫を扱っているからである。
私が今よりもっと幼かったころのある夜、
窓の外から何やら物音がした。
その物音に目が覚めて窓を見やるとそこには、
窓一面に大量のカメムシが張り付いていた。
トラウマの完成である。
犯人は勿論伊賀崎孫兵である。
隣の家に住んでいた伊賀崎孫兵は趣味が脱走のペットを大量に飼っていてそのペット達はほぼ毎回と言っていいほどに私の家に来ていた。
別に生ゴミやお菓子のカスを放置していた訳でもないし自室も多少汚いことがあったかもしれないないが虫が寄り付きそうなものは置いてなかった。
むしろ虫が寄り付かないものを置いていた。
それなのに頻繁に来るものだからAは話の通じない虫に慣れるのではなく余計に恐怖を抱いていったのだった。
ついでに生物…主に自分のペットの事になると色々と制御が効かないのである。
こっちはまあ慣れたけども。
またしても思い出という名のトラウマに浸っているとあの？と声をかけられた。
全然孫兵の存在を忘れていた。
「あぁ、すみません。ちょっと考え事をしていまして。普通に生きていて気づいたらあんな状態に。もし私が危害を加えたかどうかを気にしていらっしゃったらそちらの二匹に聞いてください。」
「そうですか。きみこ、ジュンコ、さっきも聞いたけど本当に怪我はないかい？この人に何もされていないかい？」
孫兵は私を人として扱うのか。
意外だな。
心配そうに見つめる孫兵にジュンコは困った顔をしながら首を振った。表情豊かである。
安心したようにホッと息をつくとまたこちらを見た。
「勝手に疑ってしまい申し訳ありません。恐らくいつものように自分達に危害が加わると思ったんだと思います。理解して下さるとありがたいです。」
「まあこの通りピンピンに生きてますし、気にしていませんよ。それにこちらの学園の境遇は理解しているつもりです。」
対して気にしてないので全然許している。
これが虫だったら話は別だけど。
孫兵の事だしもうこれくらいでいいだろう。
踵を返そうとした。
「それにしても…今日初めて天女様をお見かけしました。」
これは驚いた。
まさか人に興味ない孫兵が会話を続けるなんて。
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うん！ - ほうじ茶さん» お褒め頂きありがとうございます。これからも楽しんでいただけると幸いです (1月21日 2時) (
レス) id: 7fb5738de5 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - 今まで読んだ天女作品の中でダントツ面白いです！こういう性格の子好きです (1月18日 23時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うん！ | 作成日時：2023年12月24日 1時
