第十九話 目印 ページ21
「それ、ゴミじゃなくて落とし穴のサインです。」
「あら、そうなんですか？」
翌日と同じように掃除をしていたら後ろから声をかけられた。
早々に生徒と会ってしまい鐘がなる音を聞いていなかったのかと焦っていると昨日の夜からあった実習を終えて先程帰ってきたと言う。
よく見ると枝が三本並んでいた。
確かに言われてみれば不自然だ。
興味なかったから全く気づかなかった。
「はい。あぁ、だから昨日は穴に落ちてる人が多かったんですね。」
僕のトシちゃん285号と362号と895号にも誰か落ちていてガッカリしました。自信作だったのに。と彼はボヤく。
「ならこのままにしときますね〜。あ、穴って埋めなくていいんです？」
「それ、この穴を掘った作者の僕に言います？大丈夫ですよ。もし誰かが穴に落ちても修補…用具委員が埋めてくれますから。」
今修補って言ったな。
どこからともなく踏鋤を取り出した綾部喜八郎はお得意の穴を掘り始めた。
変に避けても怪しまれるだけだろうし、黙々と穴を掘り始めた綾部を横目に私も作業を再開した。
「まだ穴に落ちてないんですか？」
「えぇ、穴の存在も今知ったし。」
「ふーんそうですか。」
ザクザクと穴を掘り進める手を止めない綾部に時々質問されては答えを繰り返している。
「そういえばなにか付けてます？」
「あー香水かしら。苦手でしたら控えますけど。」
「いえ、それくらいなら気にならないので大丈夫です。」
「天女様は穴に落ちる予定無いんですか？」
「穴は予定組んで落ちるものじゃないです。」
「結構快適ですよ。涼しくて。」
「天女様は僕がこうして関わってくるの気にならないんですか？」
「ん〜別に。綾部には綾部なりの作戦があるんでしょう？」
「…僕の名前知ってたんですね。」
「まあ、天女だからね。」
どうにも綾部といると敬語が外れてしまう。
皆顔だけ一緒の他人だと割り切って基本的には敬語でいこうと思っていたのに。
私がいた時代とこの時代の綾部はあんまりというか殆ど変わりがない。からつい癖で喋ってしまう。
いい感じに穴を掘り終わったのか綾部が穴から顔を出した。
「僕は天女様が天女だからって理由で嫌うつもりはありませんよ。」
「そう。」
「こういう話興味無いんですか？」
「うん。綾部から関わろうとしない限り私は関わるつもりないからね。」
嫌われようが嫌われまいがどっちでもいい。
私は綾部の前にしゃがみこんで穴掘りで乱れた髪をそっと退かす。
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うん！ - ほうじ茶さん» お褒め頂きありがとうございます。これからも楽しんでいただけると幸いです (1月21日 2時) (
レス) id: 7fb5738de5 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - 今まで読んだ天女作品の中でダントツ面白いです！こういう性格の子好きです (1月18日 23時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うん！ | 作成日時：2023年12月24日 1時
