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敵の姿−19− ページ49

ミコトは冷蔵庫から缶ビールを取り出すと一つをAへ渡す。


『えっ、いいの?』

「うん、休憩〜ほら乾杯!」

『乾杯!頂きます』


そう言ってAはプルタブを開けるとビールを喉へ流し込んだ。そこに秋彦が声をかける。


「Aちゃんごめんね、ねーちゃんに付き合ってもらって」

『ううん!全然だよ!むしろ秋ちゃんこそ付き合ってくれてありがとね』


にこっ、と笑うAの笑顔が昔から変わらなくて、なんだか秋彦はホッとした。

ミコトは夏代のいるソファーへビール片手に近寄る。


「あっ、それ雑居ビルの火事の訴状?ビルの管理責任問うっていう」


夏代の目の前に置かれた、冊子には“増子第一ビル火災訴訟内容(素案)”と書かれている。
Aも近くに寄ってその訴状を覗き見る。


「ああ、そう。亡くなった10人の遺族全員が訴訟団に加わったの」


表に書かれてにる見慣れない名前にミコトは聞く。


「江口さんってそんな人いた?」

「うん。その人はね隣の空き家の持ち主さん」

「ああ〜」

「担当の不動産が行方不明になってなかなか話が進まなかったのよね」

「行方不明?」

「うん」

『不動産……行方不明……?』


何か引っかかるようなその単語を意味深に呟くAだが、その時秋彦が声を上げる。


「嘘!返事きた」

「やけに早いわね」


夏代は訝しげな表情だ。
ミコトは秋彦からスマホを受け取ると、父からの返事を急いで確認する。


「あっ、クロナガアリ!お父さん、すごっ」


そう言いながら図鑑のページを慌てて捲る。


「いつも返事遅いのに」


不満そうな夏代の声を無視して、ミコトは図鑑に夢中だ。


「あっ、クロナガアリはフタフシアリ亜科。フタフシアリ科の蟻は蟻酸を出さない……蟻酸を出さない?」

『蟻酸を出さない?』


Aとミコトは顔を見合わせて、首を傾げた。





.

−あとがき−→←敵の姿−18−



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鞠香(プロフ) - ともみさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!頑張ります! (2018年3月19日 19時) (レス) id: 3fdde94521 (このIDを非表示/違反報告)
ともみ - おもしろい!更新楽しみにしてます! (2018年3月19日 2時) (レス) id: f743b881db (このIDを非表示/違反報告)
鞠香(プロフ) - 青龍 葵さん» こんにちは。ドラマの疾走感凄かったですね!完結はもう少し先になりますが、それまでお付き合い頂けると嬉しいです!優しいお言葉ありがとうございました。頑張ります! (2018年3月17日 18時) (レス) id: 3fdde94521 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - あっという間にドラマ終わっちゃいましたが、どのような最後(完結)になるんだろう?中堂さんとの関係は?とか思いながら、まだまだ完結は先かと思いますが無理のない程度で頑張って下さい!更新、楽しみにしてますw (2018年3月17日 4時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鞠香 | 作成日時:2018年3月11日 14時

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