遥かなる我が家−11− ページ24
その夜、所長室で中堂はラーメンを作っていた。
「神倉さんって天下りじゃなかったんですか?」
久部の質問に中堂はバカバカしいと言わんばかりに答える。
「東海林のデマを真に受けるな」
そして、鍋に麺をいれた。
「潰れかけたUDIプロジェクトをここだけでも成立させたのは、神倉さんが資金集めに奔走してくれたからだ。神倉さんが厚労省時代、力を入れていたのが全国の歯科カルテのデータベース化」
「どうしてそこまで?」
「東北の震災があったからだ」
首を傾げる久部に中堂は淡々と答える。
「現地のカルテは流されて、集められた歯科医師は遺体を触った経験もなく、人数も足りなかった。身元不明の遺体が沢山出て遺体の取り違いもあった。その時、神倉さんは災害担当で現地に行ってた」
中堂から聞かされる神倉の話を久部は黙って聞いていた。
「来る日も来る日も運ばれてくる遺体。“山ほど見た”と言ってた。身内の遺体を捜してる家族もいつまでも帰れない遺体も」
そう言って中堂は遠くを見つめた。
「はい、脇腹に内視鏡手術の痕がある男性でAB型。現在の年齢は40歳代ですね。はい、そうです」
久部は9番の身元判明に奔走していた。
電話をしてる久部のデスクにAはコーヒーを置く。
「えっ!該当者いました!?」
久部の言葉にみんなの視線が集まる。
「ああ……いたけど生きてますか……あっ、いえいえ、それはもう何よりです。ありがとうございました」
「見つからないか〜」
電話を置くと落胆するミコトに声をかけた。
「でもまだ連絡待ちいくつか残ってますから」
「ねぇ、火事が起きた雑居ビルの周りで肝試しが流行ってるんだって。幽霊が出るって」
夕子はスマホの記事を見ながらみんなに言う。
久部は呆れたように呟いた。
「早速オカルト扱いですか」
「幽霊がいたら解剖室は幽霊で大渋滞だね」
「ふふっ、だよね〜」
ミコトの言葉に夕子は笑う。
「でも、被災地でもあったっていいますよね。ほら、友達とか肉親の霊を見るって話」
「まぁ、それは……またちょっと違うんじゃない?死んだ人にもう一度会いたいっていう強い思いが見せさせるもの?」
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鞠香(プロフ) - ともみさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!頑張ります! (2018年3月19日 19時) (レス) id: 3fdde94521 (このIDを非表示/違反報告)
ともみ - おもしろい!更新楽しみにしてます! (2018年3月19日 2時) (レス) id: f743b881db (このIDを非表示/違反報告)
鞠香(プロフ) - 青龍 葵さん» こんにちは。ドラマの疾走感凄かったですね!完結はもう少し先になりますが、それまでお付き合い頂けると嬉しいです!優しいお言葉ありがとうございました。頑張ります! (2018年3月17日 18時) (レス) id: 3fdde94521 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - あっという間にドラマ終わっちゃいましたが、どのような最後(完結)になるんだろう?中堂さんとの関係は?とか思いながら、まだまだ完結は先かと思いますが無理のない程度で頑張って下さい!更新、楽しみにしてますw (2018年3月17日 4時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鞠香 | 作成日時:2018年3月11日 14時