予定外の証人−16− ページ35
その後日、ミコトが使った実験の肉を利用して外でバーベキューをしていた。
肉に塩を振りながら神倉は言う。
「これね、セルマランドゲランドのゲランドの塩」
神倉の言葉に久部は首を傾げる。
「な、何言ってるか分かんないです」
「お肉が優しくおいし〜くなるんです」
すると、少し離れたところで電話をしていたミコトが戻ってきた。
「被害者の弟、自供しました。しずくさんのレシピは全部弟さんが考えていて、事件の日も新しいレシピを頼まれていたそうです。弟さんは自分の京料理の店が傾きかけていた事もあって、レシピを提供する代わりに印税を寄越せと姉に迫ったものの冷たくあしらわれて」
『それで、刺殺か……』
なんとなく気落ちする2人に、神倉は言う。
「冤罪が防げてよかったです。みなさん、お疲れ様でした」
その一言に乾杯をした。
「あとは坂本さんですね」
神倉の言葉にミコトは肉を頬張りながら言う。
「坂本さん、訴え取り下げてくれそうです。向こうの教授がムーミンを好きだったら」
「ムーミン?」
裁判の日、ミコトは坂本に話をつけに行っていた。
中堂が書いたパワハラをしないと言う旨の誓約書。それでも職場復帰が嫌なら、ミコトの知り合いの教授を紹介すると。所謂就職先の斡旋だ。 それで坂本は納得してくれたらしい。
「美味しそうですね」
『あ……木林さん』
「あら、よければ木林さんもどうです?」
「いえ、私はまだやる事がありますので。これで失礼します」
そう言って丁寧にお辞儀をして去って行く木林に、夕子は微笑みながら手を振り、その行く先をAは見つめた。
「ちょっと、東海林さん!お肉焦げてますよ。Aさんも手がお留守になってます!」
「え?」
『あ、夕子そこのお肉焦げてる』
「あー!って、Aの目の前の野菜も焦げ焦げ」
Aは慌てて網の上の肉や野菜をひっくり返す。
そして、夕子はまだぼんやりと視線を漂わせるとそこには先程の木林と中堂が話している姿。
「なーんか、あの2人って妙に仲良くない?」
『中堂さんと木林さん?』
「そう。もしかして……そういう関係?」
『もう、夕子ってば』
「あはは」
そう言って夕子は豪快に笑うと肉をひっくり返した。
窓ガラス越しに見える中堂と木林の姿をミコトも見つめているのに気付かずに。
予定外の証人 -fin-
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カハラさん(プロフ) - 中堂先生のお話ないかな〜と探していたところ、こちらに辿りつきました。とても楽しいです!そして胸キュンしてます。ステキなお話を作ってくださってありがとうございます。 (2021年2月23日 8時) (レス) id: 1af5439158 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ(プロフ) - 質問よろしいですか? (2020年12月26日 16時) (レス) id: 7b57897ee4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鞠香 | 作成日時:2018年1月31日 23時