予定外の証人−05− ページ24
「なんですって！？」
ラボに神倉の声が響く。
それに答えるのはミコト。
「ですから、弁護側の証人として裁判に出ることになってしまいました」
「信じがたいバカだな」
『え、ミコトあの日普通に証言してたよね？』
「Aが帰った後に事件は起こったの。３DCGを見て凶器が違うー！って言い出してさ」
夕子の説明にAはこめかみを押さえた。
想像するに容易かったからだ。
神倉は続けてミコトに言う。
「検察側の証人で出た人が次の公判で弁護側の証人なんて聞いたことないよ」
「仕方なかったんです、なりゆきで……気が弱いが故の悲劇だったんです」
桜小路要一は実は妻を殺していない。
しかし、警察からの圧力に屈してしまったのだ。
「それで、何で三澄さんが？他の法医学者に頼もうよ〜」
「この状況で引き受ける奴なんていませんよ」
「そうなの？」
中堂から返ってきた言葉に神倉は疑問を投げかける。それにAは冷静に答えた。
『弁護側につく法医学者を見つけるのはタダでも難しいんです。お仲間の鑑定にケチをつけることになるし、検察や警察を敵に回すことにもなる』
「敵に回さないでくれる？」
「UDIラボは中立公正な機関ですよね？」
「理念はそうですけど〜」
「だから代理証人なんか引き受けるな言ったんだ」
「元はと言えば中堂さんが訴えられたから」
「訴えられてなくても俺は引き受けない。お前はいちいち迂闊なんだ。だからトラックごと水に沈められる」
つい最近あった失態を中堂の咎められては、ミコトも思わず口を噤む。
「それ言われるとね」
「何も言えませんね」
後ろのデスクで夕子と久部が頷く。
神倉は心配そうな面持ちで聞いてくる。
「裁判、勝てるんですよね？」
「えっ？」
「負ければ、UDIラボの信用を失います」
「大丈夫です」
ミコトのなんとも言えない笑顔に、不安は残るばかりだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1218人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カハラさん(プロフ) - 中堂先生のお話ないかな〜と探していたところ、こちらに辿りつきました。とても楽しいです！そして胸キュンしてます。ステキなお話を作ってくださってありがとうございます。 (2021年2月23日 8時) (
レス) id: 1af5439158 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ(プロフ) - 質問よろしいですか？ (2020年12月26日 16時) (レス) id: 7b57897ee4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鞠香 | 作成日時：2018年1月31日 23時
