魔界【くろのわ】 (ページ42)

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【刺客】神の御加護？ページ42

「叶？」

葛葉の声でハッとした。
葛葉が降りてきて、目の前に立っているのに気づかなかった。

「大丈夫か？」

心配そうに僕の顔を覗き込んできた。

「あっ…うん…ゴメン。」
「いや。あっちに隠れてろ。後は俺がやる。」
「ううん。大丈夫。」
「無理すんじゃねぇ…っぐぁ！」

言い終わる前に、目の前にいた葛葉が崩れ落ちた。

何が起きたか分からず倒れてしまった葛葉を見ると、
左の翼に短剣が貫通していて、背中を数本の爪で引っ搔かれて服が破れて血が出ている。

「く…くず…くずは…葛葉！！」
「かな…ぇ…にげろ…っ」
「ヤダ!嫌だよ！ねぇ！葛葉！！」

僕は座り込んで、葛葉を抱き寄せた。

「はや…っく…にげっ…」

葛葉が死んじゃう。
そう思ったら涙がとめどなく溢れてくる。

空を飛んでいた黒い塊が大口を開けて葛葉の肩目掛けて急降下してきた。
女も刺さった短剣を引き抜き、反対の翼目掛けて振り下ろそうとしている。

「止めろ！葛葉に手を出すなぁ！！」

僕は葛葉を強く抱きしめてそう叫んだ。

すると僕等のいる場所が急に強い光に包まれた。
あまりの眩しさにギュッと目を閉じた。

何秒だっただろうか、光が納まりそっと目を開けるとさっきの塊も女の姿も無かった。
そして葛葉はというと、翼の刺された傷も背中の引っ搔かれた傷も、それどころか服すら破れておらず元通りになっていた。

「くず…くずは？…葛葉！」

傷は無いのに、それでも僕の腕の中でピクリとも動かない。

「葛葉…ねぇ…起きてよ…一人にしないで…」

「んっ…」

ピクリと葛葉が動いた。

「葛葉！」
「んっ…かなぇ…」
「葛葉、大丈夫！？」

ゆっくりと目が開いて、深紅の瞳に僕を映した。

「叶…今…お前何した？」
「分かんない。何が起きたの？」

葛葉が起き上がって、翼を動かしたりしている。

「お前…本当に人間か？」

葛葉が僕にそう問うてきた。

「人間…だと思うよ。」

僕も何が何だか分からず混乱している。

「神父サマの力か…」

葛葉がそう呟いた。

「どういう事？」
「いや。何でもねぇ。助けてくれてありがとな。」
「あの女はどこ行ったの？」
「あいつは死んだ。」

葛葉の視線の先には、さっき女が刺した短剣が転がっていた。

「ホントに？」
「あぁ。それより、早くここを出るぞ。」
「でも、葛葉体力とか大丈夫なの？」
「そんな事言ってられねぇよ。お前の力で敵が増えちまうからな。」

そう言いながら僕を抱いて飛び立った。