その164 ページ22
吉「兄さんから、Aが羽田浩司の事件について調べるって聞いて、羽田浩司の基本情報を教えておこうと思ってね。」
『待って!兄さんって秀一兄さんのことだよね?』
吉「当たり前だよ。僕たちの兄さんなのに忘れたの?」
『いやそうじゃなくて、なんで秀吉はお兄ちゃんが生きてること知ってるの?』
吉「なんでって、なんでだろ?僕もわからないや。」
『知ってるなら教えてくれてもよかったのに。なんで言ってくれなかったの?』
吉「兄さんから口止めされてたんだ。Aと真純には言うなってね。」
『でも私には自分から教えてくれたよ。』
吉「Aの助けが必要だったんじゃない?Aは警察だし、僕は忙しいし。」
『なんか私が暇人みたいな言い方しないでよ!』
吉「ごめんごめん。それで羽田浩司のことだけど、Aはあんまり彼のこと知らないだろうから教えてやれって兄さんから言われてね。」
『確かに、義理の兄だけど全然知らない。秀吉みたいに尊敬してるわけじゃないしね。』
吉「だろ?だから羽田浩司の基本情報があった方が事件のこと調べやすいと思ってね。内容はメールで送るから。」
『わかった、ありがとう。』
吉「ねぇ、Aの彼氏、亡くなったんだってね…それで、大丈夫?」
『何が?』
吉「心だよ。恋人が亡くなるなんて精神的にきついんじゃないかなって…」
『大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。』
吉「本当に?彼氏って高校時代にできたって言ってた人だろ?そんなに長い間付き合ってた彼氏と死別したのに大丈夫なわけないじゃん。」
『私、意外とメンタル強いから…』
吉「嘘だ。声が悲しそうだもん。それに大学時代にAの友達(←萩原のことです)が亡くなった時は、大好きな推理小説も読まないで一日中泣いてたよね。友達の時であれだけ悲しんでたんだから、彼氏ならなおさらショックが大きいんじゃないの?」
『…そうだよ。かなり精神的ダメージは大きかった。食欲ないし眠れないし、仕事もミスばっかりして、遂には捜査中に倒れたんだから。』
吉「やっぱり。Aのことだから僕に余計な心配かけないように強がってたんだろ。双子なんだから、僕にくらいは本当のこと言ってよ。」
秀吉には全てお見通しだった。生まれた時から、いやママのお腹にいる時からずっと一緒にいたんだから、お互いのことはよくわかっているんだね。
『ごめんね。でも今は本当にもう大丈夫だから。病院にも行ったし休暇ももらったしね。』
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作者名:おひたし | 作成日時:2019年6月16日 20時