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その112 ページ17

『ごめんなさい…お付き合いすることはできません…』

握られていた手を優しく振りほどいた。あんなに迷っていたけど、本当はどうするべきかわかっていた。

諸「…Aさんは私を意識してくれていると思ったのですが…」

『もちろん、諸伏警部のことは好きです。でもお付き合いすることはできません…』

諸「それは、私が景光の兄だからですか?それとも、まだ景光を愛しているからですか?」

『…半分正解で、半分間違いです…』

しばらく沈黙が続く。車内には降りだした雨の音だけが聞こえる。

諸「それでも、私は諦めません。Aさんが私を好きになってくれるまでいつまでも待ちます。」

『別に嫌いなわけじゃないんです。むしろ大好きです。でも…』

諸「それでは、お付き合いできない理由を私が見つけたら、考え直してもらえませんか?」

『理由を見つける?』

諸「はい。Aさんは私の言った似ている点を探してくれました。ですから今度は私が、Aさんの言った半分間違いの部分を探し、正解を導き出します。期間は…」

『無期限で。私も、正解を見つけてくれるまでいつまでも待ってますから。』

諸「わかりました。正解を見つけた時には、今度こそ私とお付き合いしていただけますか?」

『もちろんです。』

諸伏警部からこんなに愛されていたなんて思ってなかった。私を大切にしてくれるところもヒロと同じ。

『諸葛亮孔明の諸に、孔明を表す伏竜の伏を書いて諸伏。』

諸「え?」

『ヒロが名前を教えてくれた時にそう言ったんです。その名字にあだ名がコウメイなら、きっと答えを見つけてくれると信じています。それまで、これを預けておきます。』

左手の薬指から指輪を外し、諸伏警部に渡した。

『答え合わせの時に返してくださいね。これは私の大事な宝物ですから。』

諸「ええ、必ずお返しします。」

諸伏警部の車を降りて傘もささずに自分の車まで歩く。指輪の消えた左手を見ると、だんだん寂しさが舞い戻ってきた。

『高明さんなら、きっと見つけてくれるよね…』

流した涙が雨に消えていった。


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安心してください、ハッピーエンドですよ!

最後の二人の会話は隠喩っぽくなってます。これは絶対に書きたいと思ってたんですよ。

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作者名:おひたし | 作成日時:2019年5月28日 18時

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