その126 ページ32
零「Aの優秀さやこの前の京都での活躍は公安にまで知れ渡っている。Aの能力は地方県警で収まるレベルじゃない。」
『そんなことないです。買いかぶりすぎですよ!』
零「それから、Aの警察としての精神は公安向きだ。」
『どういうことですか?』
零「国民だけでなくこの国を守りたいと言っていただろう。この国全体を守るのが公安だからな。裏の理事官もAの才能を高く買っていたぞ。」
『裏の理事官まで⁉』
零「理由はまだあるぞ。Aが俺を手伝うことで、間接的にだがヒロの敵討ちをすることになる。」
『ヒロの敵討ち…!』
零「ヒロの敵討ちともなれば、Aは全力で取り組むと思ってな。」
確かに、ヒロのためなら私は命懸けで仕事をするだろう。松田さんみたいに自己犠牲なんてこともするかもしれない。でも、一つだけ気になることがある。
『公安になったら、私は長野県警じゃなくなるっていうことですか?』
零「そういうことになるな。」
ヒロの敵討ちをしたいし、ゼロからスカウトされるなんてたいへん名誉なこと。でも、長野からは離れたくない。
せっかく諸伏警部が頑張ってくれているのに、東京に移り住むわけにはいかない。それ以前に諸伏警部と会えなくなるのが嫌だ。
零「どうだ?ゼロに入って俺と一緒にヒロの敵討ちをしないか?」
『降谷さんの仕事を手伝いたい気持ちはもちろんあるんですけど、あまりにもいきなりすぎて…もう少し考える時間をもらってもいいですか?』
零「もちろんいいが、これは急ぎの要件なんだ。あさってまでには返事を聞かせてくれ。」
警察庁を出て、道を歩きながら考える。私が公安になれば忙しい降谷さんを少しでも楽にさせてあげられる。でも諸伏警部とは離れたくない。
国家に関わる問題に私情を挟むなんて公私混同にもほどがある。こんなことで悩むような人に公安が務まるとは思わないよね。
どうにか長野にいながら公安の仕事をできないだろうか。それが一番いいんだけど、こんな私のわがままを降谷さんが許してくれるとは思えない。
それに期限は明後日。ゆっくり考えている暇なんてない。
こうなったら諸伏警部のことはきっぱり忘れて、指輪だけ返してもらおうかな。
でも私は指輪を返してほしいんじゃない。付き合えない理由に気付いてもらいたいだけ。
警視庁の前まで来ると、なぜだか機動隊が大勢いて何やら騒がしい様子。機動隊を指揮している人に見覚えがある。
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作者名:おひたし | 作成日時:2019年5月28日 18時