雪男たちとの社内恋愛 (ページ30)

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紫に包まれるページ30

家の住所を伝えて、タクシーが走っていく。

どうしてこういう時って幸せだった頃の思い出が蘇るんだろう。

ひとりになりたくない。

その一心で私は、スマホを開いた。

いまどこ?
辰哉家だけどどしたの❓俺に会いたくなっちゃった❓わら
ひとりでいたくなくて
辰哉俺んとこおいで

『すいません…行先変えてもいいですか？』

「どちらに向かいましょう？」

『えっと、住所が…』

15分後

「ありがとうございました」

「来た来た」

『外で待っててくれたの？』

「雨やんだかなーって」

『止んだね、雨』

「なぁに、そんな泣きそうな顔して」

辰哉の優しい声で包まれて、また涙が頬を伝う。

「寒いから中入るよ」

そっと辰哉が手を引いてくれて、じんわり温かさが伝わってくる。

部屋に入ると、何も言わず抱き締めてくれる。

和也の事を思い出して泣いてるのに、こんなのずるい。

でもこの涙とともに過去が流れていく事に未練すら感じてる。

こういう時、辰哉はそれを分かってくれる。

「なんも言わなくていいから、お風呂入っておいで」

『…うん』

「それとも一緒に入る？俺はAとなら一緒に入ってもいいけど」

『…うん』

「え？ちょ、今断るとこじゃんか」

『入らないの？』

普段の余裕綽々な辰哉の表情じゃなくなって、少し焦ってるような顔。

少し黙って何かを考えてる。

「いくよ」

そう言ってお風呂に連れて行かれた。