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街ゆく人達が振り返る程のびしょ濡れの和也。
『…帰りなよ』
「少しだけ話させて」
『風邪引くって』
「俺はいいから」
『分かったから…』
このままにしておいたら絶対風邪ひく。
でも話したい、って諦めてくれない。
しぶしぶ2人で和也の家に向かって歩き出した。
「俺、Aの事まじで好きだった」
『嘘つかないでよ』
「あの日、一緒にいた女は彼女でもなんでもないよ」
『じゃあ何でキスしてたの』
和也から聞いた話はこう。
あの日の相手の女性は幼なじみで、ずっと和也に思いを寄せてた人だった。
彼女が出来たと言っても、職場まで来て家まで着いてきたりストーカー行為を受けてたらしい。
「あの日、Aの家にAが入っていく写真を見せられた。
今すぐキスしてくれないとこの女を殺すから、って詰め寄られて、あとは友達の見た通り。
俺からキスした」
『そんなの、嘘』
「その2年後、その女は逮捕されたから調べればその時の記事出てくるんじゃねえかな」
『そんな…そんな話信じられない』
「ま、そうだよな、聞いてもらえただけで満足」
『…………』
「ごめんな、」
いつの間にか和也の家に着いていて。
いつ呼んだのか、目の前にはタクシー。
タクシー代、と1万円札を無理やり握らされた。
「本当に好きだった、A」
『私も…大好きだった』
「ありがとな」
『信じられなくて、ごめ…「謝んな」
「信じられる男じゃなかったんだよ、俺が。ちゃんと話せたからこれで本当に終わり」
『え？』
「連絡先、プライベート携帯からは消しといたから明日からは会社で会っても上司と部下、いいな？」
『そんな、』
「ほら、泣くな」
『だって…』
「Aは笑ってる顔が一番可愛いんだって、笑えー？」
和也の手が私の頬を摘む。
『ふっ…ちょっと、やめてよ、(笑)』
「よし、完璧。可愛い。」
そして私を半ば無理やりタクシーに乗せた。
バタン、ドアが閉まった。
さよなら。和也。
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作者名：momo | 作成日時：2022年7月5日 11時
