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そして翌日。
「お疲れ、行こ」
『あ、うん！』
会社を出たのは19時。
取引先に提出する書類の締切やらなんやらで、部署ごとみんな残っててこの時間に。
「あー！今日は酒が美味しく飲めそうだな」
『ほんと、今日はみんな大変だったもんね』
二人で入ったのは、小洒落たイタリアン寄りの居酒屋。
とはいえビールもカクテルもなんでもあるみたい。
「俺ビール！Aちゃんは？」
『じゃあ私もビールで！』
「食べれないものとかある？」
『ない！なんでも食べる！』
そう言うと目黒さんはふはっと笑って、じゃあ適当に頼むね、と良さそうなものを数皿頼んでくれた。
しばらく他愛もない話をして、ほんのりお互いに赤くなってきた頃。
目黒さんが少しの間を置いて、話し出した。
「俺、彼女と別れたくて」
『そうなんだ…』
「高校の時から付き合ってるんだけどさ、最初はお互い大好きでお互いがいればそれで良くて」
『うん』
「すっげー仲良いカップルだったと思う」
『そうなんだ』
「でも、たまたま俺が俺のミスのせいで残ってくれて遅くなったからってバイト先の女の先輩と一緒に帰ってるところに彼女が迎えに来てさ」
『うん』
「浮気してると思ったらしくて、そこからアイツは変わった」
『そうだったんだ…』
ぽつりぽつりと喋る目黒さんから目が離せない。
「俺すっげー好きだったから何回も説明して、分かってもらおうとしたけど結局分かってくれなくて今も毎回アイツが不安になる度にその話を持ち出されて」
『うん…』
「段々、うんざりしてきて弁解すんのも説明すんのも安心させようと頑張るのも辞めた」
『うん』
「だから昨日は、最後の悪あがきのつもりでその時の話をもう一回最初から説明したんだ」
でも、と目黒さんが言葉に詰まる。
「…今月、記念日なんだ、だからその日に別れようと思ってる」
『うん、そっか…後悔はしない？』
「わかんね、ずっと好きだったし、なんならまだ好きだし…でも気づいたんだよね。アイツは俺といる限り幸せにはなれないし、俺も幸せになれない」
目黒さんが、悲しそうに笑う。
その表情を見て思わず手が伸びた私は、気付いたら目黒さんの頭を撫でていた。
「ありがとう」
『ううん、何もしてあげられないから』
「こんな重い話、凄いかっこ悪いけどAちゃんに話してよかった」
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作者名：momo | 作成日時：2022年7月5日 11時
