紫の誘惑 ページ11
夜になって、歓迎会をしてくれるという居酒屋へ、初日で特に何も大きな仕事のなかった私は深澤さんと2人で先に向かうことになった。
「まだ緊張してる？」
『いえ、だいぶ慣れてきました！みなさん気さくで優しくて良かったです』
「そっか、よかったよかった」
そう言って深澤さんに頭を撫でられる。
慣れてる人なのかな…？
「Aちゃんって呼んでもいい？嫌なら嫌って言ってね」
『全然いいですよ！』
「俺のことはふっかって呼んで。辰哉でもいいけど」
『ええ！？ふっかさん、じゃダメですか？』
「ん、まあ今はいいよそれで」
満足気にふっかさんが笑う。
優しくて、距離を縮めるのも上手くて。
きっとモテるんだろうなぁ。
先に居酒屋に着くと、10人分の宴席の支度がされていた。
「二人しかいないし、真ん中陣取って向かい合わせに座ろっか」
そう言われど真ん中にふっかさんと向かい合わせに座ることになった。
なかなか来ない他の人たちを待ちながら、ふっかさんとたわいもない話をした。
20分後、ガヤガヤした男性の声が近づいてきた。
「おっせーよ！まあその分Aちゃんと仲良くなったもんね俺だけ」
「は？ふっか、Aちゃんってなんだよ」
食いついてきたのは渡辺さん。
「呼んでいいって言われたから」
「何それ、俺も呼んでいい？」
そう言って渡辺さんが私の隣に座ってネクタイを緩めた。
『は、はい！もちろん！』
「っしゃ」
小さくガッツポーズをする渡辺さん。
そんな渡辺さんをよそに、あっという間に全員に名前で呼ばれることになった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 886人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：momo | 作成日時：2022年7月5日 11時
