私の専属ヒーロー2

奪えばいい ページ26

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『……っ』

声も出ない。

何も言えない。



「…Aさん、」

『……いこ』

早く見えない場所に行きたい、と目を逸らしたくて小走りで立ち去る私を目黒くんが追い掛けてくる。



「…あれ放っておいていいんすか？」

『…もう、終わりだよ』

「ちゃんと…話さないと」

少し目を伏せて、何故か申し訳なさそうな顔をしている目黒くんがそう言ってくるけど、でももう答えは出てるはず。



『何を話すの？キスしてるとこ、見たんだよ？』

「…そうだけど…何か事情があるのかもしれないし、」

『なんで照を庇うの？事情ってなに？目黒くんにとっては今絶好のチャンスでしょ！？奪えばいいじゃん！私の事好きなんじゃないの？』

自分でも何を言ってるのか分からない。

凄く馬鹿な事を口走ってる。




「…言ったでしょ、心が俺のものになんないと意味ないって」

『…なんで、目黒くんが泣きそうな顔してるの、』

「なんでだろうね、」





それはそれは悲しそうな目で私を見つめる。

いつもの自信満々な笑顔でも、見透かされそうなほどの澄んだ瞳でもない。

等身大の目黒くんを見た気がした。

悲しそうな顔の理由は、分からないけど。



「…帰りましょっか、送っていきます」

『…うん』




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