【d!】お嬢様、迫るのはおやめください (ページ5)

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クローゼットを開けて見ると、全身が真っ黒のメイド服のようなものが何着も入っていた。

フリフリを想像していたのでそれに比べれば全然良いのだが本当に黒以外何色も使われていないため、若干黒子のような印象を抱く。

といってもデザインは洗練されていて上品だしそもそもメイドなんて目立たなくてなんぼだろうからこれで良い気もするな。

メイド服を確認した後、私はドアに鍵をかけて早速着替えることにした。

全身鏡で確認して見ると私が黒髪黒目のせいか思っている以上に黒の印象が強く出てきている。

まあほとんどこの格好で過ごすことになるから早めに慣れないとな。

次に私は椅子に腰をかけて何枚か渡された書類を確認することにした。

大体は普通の業務にも書かれているような義務的な内容だったが、少し気になる文言がいくつかあった。

・ゾムの部屋には入らないこと(本人から許可が降りていた場合であっても無効。掃除は不要)

・鬱の部屋を掃除する時は彼が不在の時に行うこと、彼と情事を重ねないこと

ゾムやら鬱やらは住民の名前でトントン様と同じくおそらくあだ名だと推測する。

ゾム様、と呼ぶべきか。彼の部屋には何があっても立ち入ってはいけないらしい。

本人が許可していても勝手に無効にされるなんてよっぽどだ。

鬱様の方はさらっとストレートに書かれていて驚くところだが、おそらく女癖の悪い人なので変な関係は作るなよということだろう。

部屋も本人がいる時に入ると碌なことがないようだから気を引き締めておかなければ。

後ろの方にはここの住人、つまり私の主人となる人達が顔写真付きで載っていた。

先ほど挨拶したトントン様の当たり障りない情報をサラッと見てから、怪しい文言があった鬱様、ゾム様は真っ先に確認することにした。

鬱様は紺色の髪に青い瞳を持ち眼鏡をかけている男性のようだ。

会ってもいないのに決めつけるのもアレだがあの注意事項を読んだ後だとなんとなく女たらしのように見えてくる。

彼の顔写真をじっと眺めていると、一瞬女性が写った気がした。

ピンクのようなグラデーションのついた美しい長髪を持つお嬢様のような女性が。

目を擦ってもう一度顔写真を確認するがやはりそこには男性が映っているだけだ。