【d!】お嬢様、迫るのはおやめください (ページ14)

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そもそもそんな事をする意味も無いだろうしこんな大規模なモノを一夜で行う事なんて不可能に近いだろう。

「あの、チーノお嬢様。他のご主人様の所在を御存じでしょうか」

とりあえず他の住民の詳細を知りたかった私は恐る恐る彼女に尋ねた。

「そうですわね。ウツお姉様もさっきお出かけになりましたし、他の方も多分不在だと思いますわ。……ああでも、確かロボロお嬢様はもう帰宅していらっしゃるかも」

“おそらく自室にいらっしゃいますわ”と教えてくれたチーノお嬢様にお礼を言いつつ、私は頭を下げて退室した。

ロボロ様、というのも資料で見た覚えがある。面布をつけていて特徴的だったのでよく記憶に残っているのだ。

そして彼の写真にも女性の姿が浮かび上がっていたはずだ。

私の考察が間違っていなければ、チーノ様が言っていた“ロボロお嬢様”もその姿をしているのだろう。

ロボロお嬢様の自室を訪ねようか迷ったものの、特に用もないのにメイドが不用意に訪れるのは不自然かもしれない。

結局謎は解けないまま、私はウツお嬢様に頼まれた自室の掃除をすることにした。

彼女の部屋の位置は教えてもらえていなかったが、もしかしたらと思い鬱様の部屋と同じ場所に行ってみる。

念の為にノックをしてみるが反応が無かったので静かにドアを開けて部屋に足を踏み入れた。

部屋に入ると机の上に書類が置かれたままでそこにウツお嬢様の名前が書かれている。

おそらくではあるが、部屋が合っていることに安堵した。

部屋は割と綺麗であったがローテーブルの上にはかなりの数の煙草が捨てられている灰皿が置かれていた。

そういえばリビングの机の上にも灰皿が置かれていた気がする。ウツお嬢様もチーノお嬢様も喫煙者なのだろうか。

部屋にあるものを極力動かさないように掃除しているとふと姿見に映った自分の姿を凝視する。

昨日は廊下の大きな鏡の前で倒れて、その後に起きたらこの不可思議な状況になっていた。

もしかしたら“鏡”に何か原因や意味があるのではないか。

アニメや漫画の世界でないのだからそんな事はあり得ないだろうと思いつつも、どこか吸い込まれるように自分の姿を見つめ続ける。

ぐらりと視界が歪む感覚がフラッシュのように襲いかかった。

　──────この、感覚は──。

大きな音を立てて倒れ込んだ私は逃れる術もなく意識を失った。