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私は一瞬呆然とするものの慌てて見よう見まねのカーテシーをした。
「お初にお目にかかります、この屋敷でメイドとして雇っていただくことになった佐藤Aと申します」
彼女は口角を下げたまま見定めるように私に視線を送ってくる。
適当な対応が分からず私も姿勢を崩さぬまま彼女の視線を受け続けた。
それにしても彼女はやはり私が写真で見た女性と瓜二つだ。
あれはどういう仕掛けなのかと思っていたが本当に実在する女性だったとは。
やはり髪色こそは違うものの鬱様に雰囲気が似ているからお姉さんか妹さんなのだろうか。
「それで貴女、こんな所で何をしているの？メイドなのに主人である私にお茶も淹れないなんて」
「は、はい、申し訳ありません」
反射的に頭を下げたものの彼女の言葉に違和感を覚える。
“主人である私”と言っていたが、あの書類で確認した通り私の主人は男性だけのはずだ。
自分を来客だというなら分かるが彼女が私の主人というのは一体どういうことなのだろう。
「まあいいわ。佐藤さんでしたっけ？私の事はウツお嬢様とでも呼んで頂戴」
「は、はい。ウツお嬢様」
戸惑いがちに名前を呼んだはいいもののやはり明らかに状況がおかしい。
なんでこの人は鬱様と同じ名前なんだ？
さっき彼女が自身を私の主人だと言った事も意味が分からない。
私は寝ぼけているのか？頭がおかしくなってしまったのか？
そう疑いたくなるぐらいにこの状況は不可解なものだった。
しかし、自分の発言が当然の事のような顔をしている彼女に何か疑問をぶつけたとしてもおそらく怪訝な顔をされるだけだ。
「私は今から出掛けなければいけないから。自室の掃除をお願いするわ」
「しょ、承知いたしました」
ウツお嬢様に頭を下げて見送りつつ、私はこの理解不能な謎を解明するために情報を求めて探索を始めた。
まず状況を整理しなければいけない。
私は昨日の夜二階の鏡を見ている時に、眩暈によってバランスを崩して意識を失った。
そして今日の朝自室で目覚めたが特に体調に問題はなかった。
私は主人達に謝罪しなければならないと慌てた廊下を歩いていると、昨日写真に浮かび上がった人に瓜二つな女性がリビングから出てきた。
鬱様に似た雰囲気を持つ彼女は自身を「ウツ」と名乗り私の主人であるといった。
屋敷を回ってみたところ内装や外の景色も何も変わっていない。
私が用意してもらった部屋もそのままだ。
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作者名：たこやき | 作成日時：2023年12月17日 16時
