【d!】お嬢様、迫るのはおやめください (ページ11)

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重い瞼を開きながら大きくあくびをする。

ああ、なんだもう朝か──────

　────って違う違う違う違う。

私は確か、夕食を食べに来ない主人達を呼びに行こうと二階に行って廊下の鏡を見てそれから目眩が起きて……

え、私、その後どうしたんだっけ。

なぜか自室のベッドで寝ていてさらに朝日が窓から差し込んでいる状況に頭が混乱する。

誰かが倒れた私をここまで運んでくれた？

だとしたら初日から仕事もせずに廊下にぶっ倒れてさらに人様に迷惑をかけるだなんて大変な始末だ。

焦りから反射的に起き上がったものの自分の身の軽さに少し違和感を覚える。

体調不良か何かで倒れたのかと思っていたが何も体に異変はないしむしろ気分は良好だ。

私は慌てて部屋を飛び出して主人達を探しながら謝罪の言葉を考える。

一体なぜ倒れてしまったのかは分からないが自己管理不足で迷惑をかけてしまったことは明白なのだから。

廊下を足早に歩いているとリビングで何か話し声が聞こえてきた。

人の気配に私は姿勢を正して身なりを確認しようとしたがその声の高さに動きを止める。

ん？じょ、せい？

……間違いない、この声の高さは女性だ。しかも女性が二人で会話をしている。

しかしこの我々荘には男性しかいないはずだ。誰かの来客だろうか。

来客だとしたら本来はお茶でも淹れなければいけない立場だが今は主人達に自分の状態の報告と謝罪をするのが先だ。

そう思いそっとリビングの前の扉を素通りしようとした時だった。

ドアノブが回る音とともに人影が扉から出てきた。

来客の女性が出てきたのだろうか。

私は緊迫して少し強張りつつも挨拶をしようと背筋を伸ばした。

人影が目の前に現れた瞬間、秒針が止まったように感じた。

目の前で美しいピンクのグラデーションが靡く。

　────私は、この女性を知っている。

素性も名前も知らない。でもこの顔だけは、この姿だけは、鮮明に脳内に焼き付いている。

彼女は私が書類を確認していた時に見た女性だ。確か鬱様の写真の上に浮かび上がった──

「あら、どちら様？新しく入ったメイドかしら」

彼女は気高い様子で口を開いた。

その美しい容姿に加えてその所作の一つ一つまで品があって、どこかの国のお姫様のようである。