いくつもの夜を (ページ42)

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第42夜ページ42

ym side

「ふ、え、やま、」

「伊野尾ちゃん、」

今度は俺が伊野尾ちゃんの声を遮って、少し大きく声を出す。
ぴくりと体を震わせたのは、伊野尾ちゃんは俺が怒っていると思ってるからなのかな？

「そのお誘い、すっごい嬉しいんだけど、」

「う、うん。」

「俺、体だけじゃやだ。」

「……ふぇ？」

首をかしげる伊野尾ちゃんの手を握り、そっと語りかける。

「伊野尾ちゃんの体だけじゃ、夜の伊野尾ちゃんだけじゃ、やだ。……だから、気持ちごと俺に預けてよ。伊野尾ちゃんの、全部が欲しいの。」

「……え、え、それって、」

「だから、俺の恋人になりませんか？」

「ふ、ふぇ、あの、えと、」

視線をさ迷わせ、目に涙を溜めた伊野尾ちゃんが、小さく口を開く。

「夢とか、罰ゲームとかじゃ、ない？」

「も、もちろん！」

「や、やまだは本当におれのこと、」

「好きだよ。」

「……おれも、って言ったら……？」

お馴染みだけどあざとい必殺技・上目遣いを駆使した伊野尾ちゃんの言葉は、上手く理解できなかった。

「おれも、ってなにが？」

「だ、だから……、おれも……すきだよ。」

「……まじ？」

「まじ。」

えへ、と小さく笑う伊野尾ちゃんを、思いきり抱き締めた。

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